色鮮やかで模様も多岐にわたるウクライナの刺繍は世界でも人気があります。ウクライナに古くから伝わる刺繍の数々を展示する博物館にご案内しましょう。
首都キエフにあるイヴァン・ホンチャール博物館にはブラウスやハンカチなど貴重な刺繍が約200点展示されています。最も古い物は17世紀にまで遡ります。
一人の人が生涯にわたって使うこともある生地は、長さが6~7メートルに達するものもあります。
イヴァン・ホンチャール博物館のピーター・ゴンチャール館長:「このような宝物のモチーフを刺繍した生地で、婚礼の時に新郎新婦を結びます。そして時が経ち夫婦が亡くなった後、これらの装飾品も一緒に埋葬されるのです。」
ウクライナ刺繍のマスターであるナディアさんがまとっているブラウスの模様はポリーシャ地方のもので、現在この模様と同じブラウスを探すことはできないと言います。
模様には意味がありますが、その意味を知る人は少ないそうです。
コレクターのユリー・メルニチュクさん:「母親は常に子供たちの安全を心配するものです。そして母親ができる最善のことは、安全を祈って刺繍した服を子供に着させることです。店やマーケットで購入しません。」
博物館を訪れる観光客もさまざまな模様に釘づけです。その中の卍(まんじ)の模様はヒトラーのナチスによって盗用されるまでは、何も悪い意味を持ってはいませんでした。
博物館のスタッフ・アンナ・コシュマネンコさん:「卍の模様は良い意味があり、非常に古くからある模様で、吉祥を表します。」
この刺繍は展示作品の中で最も古いもので、とても薄い麻布に金や銀の絹糸で独特な模様が刺繍してあります。この作品を仕上げるには非常に高度な刺繍技術が必要とされます。
博物館はこれらの作品の展示を通して、ウクライナに古くから伝わる伝統文化を復興させたいと期待を寄せています。