【悠遊字在】漢字の由来
盜賊の話ー「盜」は「さんずい」、それとも「にすい」?
【あらすじ】
「ぬすむ」は普通、「にすい」の「盗」を使うだろう。だが、本来は「さんずい」の「盜」を使ったのだという。では、この字の由来とは?
まずは、この「盜」を分解してみよう。「氵」と「欠」、「皿」に分かれる。「氵」はさんずい、つまり水を指す。「欠」は足りないことで、「皿」は食べ物などをよそう入れ物だ。これはすなわち、他人の「皿」にある、自分には「欠」けたご馳走を目にして思わず口から「水」(よだれ)が出る。そして、我慢しきれずに第三の手を伸ばし、そのご馳走を奪ってしまうのだ。
一つ一つの漢字に秘められた広くて奥深い世界。その由来を知れば、古人の想像力の広さと観察力の細やかさに驚くはずだ。皆様も漢字の真髄に触れて、豊かな心をはぐくんでほしい。『悠遊字在』では、これからも面白い字を続々とご紹介。お見逃しなく。
【漢字について】
1、甲骨(こうこつ)文字:
四千年近い歴史を持つ漢字の中で、最古のものとして残っているのが甲骨文字。殷の時代、国にとって重要なことがあると、亀の甲羅や牛の骨を焼いて占った。そのひび割れで出た占いの結果は、刻して記録された。この際使われた文字が、ずばり甲骨文字。
2、金文(きんぶん)文字:
甲骨文字の後、つまり殷・周から秦・漢の時代まで使われた文字。青銅器に刻されたり、鋳込まれたりした。ここでの金は、青銅器を指す。当時は、官職に任命されたり、戦功を上げたりすると、それを青銅器に記録したという。
3、小篆(しょうてん)文字:
金文の後に誕生したのが篆書(てんしょ)。これは小篆と大篆に分かれる。秦の始皇帝は、ばらばらだった文字を統一し、標準書体を定めた。これが小篆だ。
4、楷書(かいしょ):
南北朝から隋唐の時代にかけて標準となった書体。漢の時代まで使われた隷書から発展したもの。