米連邦捜査局(FBI)などによると、中央情報局(CIA)の元中国系職員・李振成氏(53)が15日、中国に潜伏するCIA工作員や協力者の情報を中国に密告したとして、国防情報違法保持の罪で逮捕された。
ニューヨークタイムズ紙昨年5月の報道によると、米捜査当局者の話では、2010年後半から12年末にかけて、中国でCIA工作員や協力者約18〜20人が殺害または逮捕され、アメリカの在中諜報ネットワークは大打撃を受けた。
後に李氏がFBIの捜査線上に浮かび上がった。
中国系アメリカ人の李氏は1982〜86年米陸軍に服役、1994年CIAに入局、機密情報に接する権限を持つ。2007年CIAを退局、家族と香港に移住した。2012年一家が米国に戻ったが翌年再び香港に渡った。
米メディアは捜査関係者の話として、2012年の帰米はFBIが仕込んだもので、その間、李氏に対する事情聴取を幾度も行ったという。
米司法省の発表によると、FBIがその滞在先ホテルの部屋から、CIA在中協力者の実名・電話番号、協力者会議の議事録、会議の場所、秘密拠点の住所など極秘情報を記したノート2冊を発見したが、李氏は事情聴取でノートの存在を伏せていた。
李振成案件は直近10年間の米中間重大諜報案件の一つに数えらるとみられる。
米中諜報戦といえば、世界中に衝撃を与えた1980年代の金無怠事件が代表的事案にあげられる。当時、米国に政治亡命した中国情報機関高官の告発により、30年以上にわたり中国に機密情報を供与したCIAの中国系職員・金無怠がスパイ罪で逮捕された(服役1年目に自殺)。33年間連れ添った台湾人妻はそれまでに夫が中国のスパイであったことを知らなかったという。
2005年豪州に亡命した駐シドニー中国領事館の元外交官・陳用林氏は、中国は豪州を含め世界各国で厖大なスパイ・ネットワークを構築していると告白した。
中国問題専門家は、日本における中国の諜報活動は、地政学などの事情により、決して欧米諸国に劣えることはないと指摘する。