このカルテシリーズは、古代から代々伝わってきた、漢方にまつわる数々の逸話をご紹介。不可思議で神秘的、けれど強く胸を打つ内容は、漢方の魅力を再認識させてくれる。
第一回目の今回は、「藪医者と華佗(かだ)」。
ある外科医は女性患者を子宮癌と診断する。そして彼女のお腹を切り開き、腫瘍を摘出しようとしたとき、外科医の目に飛び込んできた物……それは何と胎児の姿であった。そう、この女性は子宮癌ではなく妊娠していたのだ。外科医は手術台の前で、心中激しく葛藤する。このまま手術を続行するのか、それとも正直に自分の誤りを認めて、告白をするのか?
結局、この外科医は後者を選んだ。患者、そしてその家族に自らの誤診を告げた。そして医者は、患者らに訴えられて富と共に名誉も失うことになるのだが……
胡先生がこの逸話で強調するのは、医者としての徳である。特に古代、医を学ぶ者は高い徳が求められた。逆に言えば、高い心性や道徳がなければ、師から医の極意・直伝を授かることができなかった。すなわち、一部の古代の医者は修煉者だったのである。だからこそ、彼らには今で言う特異功能、すなわち超能力が備わっていた。例えば、透視功能によって患者の体内を見ることができたのである。
中でも、龐安常(ほうあんじょう)、扁鵲(へんじゃく)、長桑君(ちょうそうくん)、華佗(かだ)、李時珍(りじちん)、孫思邈(そんしばく)などが有名だ。