汗(一)―「五種の液」のひとつ、汗

「汚い」「くさい」など、とかく現代人からは嫌われがちな汗。だが、これは人体にとって必要不可欠だ。熱が出たり、スポーツをしたり、食事を取ったりして体温が上がった場合、その体温を下げる必要がある。この場合に汗が分泌されるのだ。だが、このような正常な汗のほかに、病的な汗もある。

漢方では病的な汗を「自汗」と「盗汗」の二つに分ける。どちらも汗をかくべき理由もないのにかく汗のことだ。この内、自汗は起きている時にかく汗を指し、盗汗は眠ってからかく汗を指す。

漢方ではまた、自汗を「陽虚」、盗汗を「陰虚」と呼ぶ。すなわち自汗は陽気が不足し、盗汗は陰液が不足している状態である。したがって、自汗に対しては陽気を補い、盗汗に対しては陰液を補うようにする。

人体には汗のほかにも様々な体液があるが、漢方ではこれらを「五種の液」と呼び重く見る。しかも、これらはみなそれぞれ、五臓と対応しているのだ。

例えば、目から出る涙は「肝の液」、汗は「心(しん)の液」、よだれは「脾の液」、鼻水は「肺の液」、唾液は「腎の液」。

だから今回のように、汗が大量に出れば心血も不足する。よって、漢方で治療する場合は陽気または陰液を補うほかに、心血も補う必要があるのだ。

漢方は陰陽五行説、相生相克の理論に基づいて築き上げられている。したがって、人体のすべての物には対応する物がある、と見る。そう、人体はまさに小宇宙なのだ。

 

【漢方の世界】汗―「五種の液」のひとつ、汗

 

 
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