汗(二)―汗は「治療八法」の王様?

本日は「汗」をテーマにした2回目。前回は、漢方でとらえた病的な汗を紹介した。つまり、起きている時にかく汗の「自汗」と眠ってからかく汗の「盗汗」の二種類である。そして今回取り上げるのは、汗を使った治療法だ。

汗を使った治療法をご紹介する前に、「治療八法」に触れよう。この「治療八法」とは、まさに文字通り病気治療に使われる8つの方法で、「汗、吐、下、和、温、清、消、補」のことだ。このうち「汗、吐、下」は、「汗をかく、吐く、排便をする」を指す。これらは体内の邪気を除く方法として、「三大宝」とまで称されるほど尊ばれている。

では、どのような時に汗を使って治療するのか?大概それは風邪を引いたときである。「寒」または「風」に当たって、体が冷えた時に、汗を使って体内の寒気を追い出すのである。

しかも、汗の出し方も一様ではないという。まずは「大発汗法」。寒気を追い出したい場合に、麻黄(まおう)を用いて玉のような汗をかくのだ。このほかに、「小発汗法」あるいは「解肌(げき)発汗法」。これは、筋肉内部にたまった汗を追い出すために用いる療法で、筋肉をほぐしてからドロドロとした汗を出すのである。

日本人が漢方と聞くと、高価な漢方薬のイメージが強い。だが、間口が広く奥の深い漢方はそれだけにとどまらない。発汗、嘔吐、排便というごく普通の方法を探究し、邪気を追い出す治療法にまで極めた。つまり漢方は、我々庶民にとって実に身近なのである。

 

【漢方の世界】汗(二)―汗は「治療八法」の王様?

 
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