今回のカルテの主人公は、ある台湾の官僚夫婦である。夫婦は選挙活動のため、台湾南部へと赴いたが、その際、不幸なことに交通事故に遭遇する。結果、夫人はこん睡状態に陥った上、腕さえも切断するはめになった。
実はこの二人、台湾ではよく知られたおしどり夫婦であった。記者会見の場でこの官僚は、思わず妻への思いを漏らす。「皆様、私の妻を救ってください」
この姿に台湾中が感動した。今では希薄になってしまった「家族愛」を思い起こさせてくれたからだ。そして、多くの台湾人がこの夫人の回復を祈った。すると、ある奇跡が起こる。夫人がこん睡状態に陥った18日後、何と再び目覚めたのだ。しかも、再び踊り歌うことすら出来るようになったのだった。
胡先生は、これは「善のパワー」が起こした奇跡だと言う。つまり、数多くの人が心から夫人の回復を祈った。このような「善のパワー」が夫人に向けられたからこそ、夫人は奇跡的によみがえったのだと。
信じがたいように聞こえる話だが、実はこんな興味深い研究がある。ある科学者は、水を使い実験を行った。善のパワーやよい言葉をこめた水、逆に悪のパワーや呪いをかけた水、それぞれ結晶を作ってみたのだ。すると、善のパワーの水は美しい結晶になり、腐敗もしにくかった。逆に悪のパワーの水は、なかなか結晶にならない。なったとしても、ゆがんで醜く腐りやすかった。
もしこの実験結果が本当だとすると、考えてみてほしい。人体の約7割は水から成っている。「善」と「悪」は、人体にどれほどの影響をもたらすのだろうか。
現代はストレス社会だ。そのストレスを発散しようと、暴力を働いたり、八つ当たりをしたり、悪態をついたりする人もいる。彼らはこれで気分爽快になり、ストレスを解消できたと思うかもしれない。だが実は、ストレス解消どころか、まさに自分自身を傷つけているのかも知れない。うわべで見たことと逆のことが起こっているのである。
つまり、常に優しい心を胸に、思いやりのある言葉を心がける。これこそが健康と美の秘訣なのではないだろうか。そんなことを暗示してくれる研究結果である。
このほか、蘇生に用いるツボもご紹介。「人中穴(じんちゅうけつ)」と「湧泉穴(ゆうせんけつ)」の二つだ。「人中穴」は、口と鼻の間の縦の筋にある。また、「湧泉穴」は、足の裏の土踏まずより少し前よりのくぼんだ所だ。
【漢方の世界】カルテ(十二)―善のパワーこそ希望の源