世界最大のソーシャルメディア(SNS)、フェイスブックの中国事業責任者の王黎氏が昨年末に辞任し、後任に中国国務院行政部門の元幹部、率鵬氏が引き継いだ。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は22日付報道で、中国政府首脳とのパイプ役を務めてきたキーパーソン王氏の辞任により、中国市場への再参入戦略が後戻りになったとみている。
中国で2009年からフェィスブックへのアクセスが禁止された。失われた中国ビジネス挽回を狙い、フェイスブックは2014年、米大手半導体メーカー、インテルの中国子会社で十数年勤務した、中国生まれ米国籍の王氏を中国事業責任者に起用。その後、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は何度も中国を訪問し、大気汚染の激しい北京でマスク無着用してジョギングをするなどパフォーマンスをみせて中国市場への意欲をアピールし、中国政府に歩み寄る姿勢を打ち出した。
王氏は就任後、中国政府高官との人脈作りに重点を置いた。16年3月に訪中のザッカーバーグ氏が当時の最高指導部メンバー、劉雲山・中央政治局常務委員と会談するなど中国政府に急接近した裏に、王氏が動いたとみられる。
一方、中国国務院に属する国家発展改革委員会元幹部の率氏は、同委員会在任中、中国政府のマクロ経済政策の制定や、情報セキュリティプロジェクトの審査などにかかわった。11年から16年まで、中国大手ポータルサイトの「百度」や米ビジネス向けSNS「リンクトイン(LinkedIn)」に勤め、中国当局との関係作りに「多大な実績」を残した敏腕人物ともいわれ、昨年9月にフェイスブックに入社した
2016年11月、ニューヨークタイムズ紙は関係筋の話として、フェイスブックは中国本土でのサービス再開を目指して当局の検閲に協力するツールを開発したと報じた。中国市場再進出のため、フェイスブックは技術分野でも妥協しているとみられる。
当時、メディアの問い合わせに対して、フェイスブックの広報担当者は「中国へのアプローチに関して決定したことは何もない」と述べるにとどまった。
一方、中国のネット情報統制を担う「インターネット情報弁公室」の幹部は昨年、フェイスブックやグーグルなどが中国市場に進出するには、中国当局の法律・規定を順守するしかないと情報検閲を緩まない姿勢を見せた。