インタビュー:ビットコイン、金融政策に影響ない=日銀・山岡氏

  • [東京 25日 ロイター] – 日銀の山岡浩巳・決済機構局長は25日、ロイターのインタビューで、ビットコインなどの仮想通貨について、現時点では決済利用は広く普及しておらず、金融政策への影響はないとの見解を示した。仮想通貨を利用した資金調達(ICO)については中国や韓国が規制しているが、現実問題として規制は難しく、業界の自助努力に期待を示した。日銀として仮想通貨を発行する予定はないとも述べた。

    分散型台帳を利用し、特定の発行主体のないビットコインなどの仮想通貨については、それが幅広く普及すると、国の信用を背景とした従来のソブリン通貨が利用される比率が小さくなり、中央銀行が金利の上げ下げや量の増減で金融をコントロールする金融政策に影響が出る可能性が指摘されている。

    山岡局長は、「価格が上がり続けるものを誰も支払い手段には使おうとしないため、投機対象と支払い手段は根本的に相反する」と指摘。「仮想通貨が広範に支払いに使われれば、(日銀のような中央銀行が発行する)ソブリン通貨の政策の有効性が低下するが、現状は金融政策への影響は考えにくい」との見解を示した。

    ビットコインの価格乱高下については「ビットコイン取引の3-4割が対日本円となっており、中銀として注視しないといけない」とし、価格乱高下が間接的に金融機関などを通じ金融システム与える影響は「モニターしている」という。ただ「現段階で、金融システムの安定に大きな影響は出ていない」という。

    新しい仮想通貨の発行を利用した資金調達、ICOについて、詐欺的手法も散見されることから中国や韓国は規制に乗り出している。ICOブームはイノベーションかバブルかで意見が分かれているが、「仮想通貨は不動産などの資産と異なり(価値の)裏づけがない」ため、「バブルかどうかの判断が難しい」と慎重な見解を示した。

    ICOの規制についても「国際的な協調のもとでの対応を求める声が多いが、一律の規制を考えるのは難しい面がある」との認識を示した。「イノベーションを活かしながら行き過ぎを是正する必要があるが、仮想通貨は本質的に国境を考えないものなので、国際的にどのように(規制で)協力するか、難しいテーマが集約的に表れている」と語った。

    各国の中央銀行のなかで、スウェーデンなど中央銀行が自ら仮想通貨を発行する例も出てきたが、「スウェーデンはGDPに対する現金比率が1.4%と小さい独特な事情があり、現金へのアクセスが難しくなっている人がいるとの動機がある」と指摘。一方、他の欧州諸国や日本などは現金が広く普及しているため、「(企業や店舗が)現金の受付を拒否すると顧客を失ってしまう」として、仮想通貨が急激に普及するのにはハードルがあるとの見解を示した。

    英国の中央銀行、イングランド銀行は自ら仮想通貨の研究を打ち出しているが、「問題意識は日銀と似ており、背景となる技術を理解しようとの研究目的だ」と指摘した。仮想通貨を含むデジタル通貨について「日銀として発行する予定はない」という。

    日銀などの中央銀行による仮想通貨発行については「慎重に考えるべき点が幾つかある」と強調。「銀行券を代替する仮想通貨を発行した場合の銀行預金への影響を考慮する必要がある」ほか、「金融機関の取り付け騒ぎが起こる場合、モバイルやネットで非常に早いスピードで起こる可能性もあり、流動性危機が加速する可能性もある」との見方を示した。

    (竹本能文、木原麗花※)

 
関連記事