焦点:受動喫煙対策の厚労省案、大幅に後退 東京五輪は煙の中

[東京 31日 ロイター] – 厚生労働省が30日に公表した受動喫煙対策としての健康増進法改正案骨子に対し、たばこ規制派からは、これまでの議論から大幅な後退だと反発する声が強まっている。

このままでは、2020年の東京五輪は、近年で最も「スモーキー」な環境での開催になるとの懸念も浮上している。

厚労省が公表した骨子では、既存の小規模飲食店は「喫煙」「分煙」の標識を掲示することにより、店内での喫煙が可能とされている。

規模の具体的な数値については「現在検討中」だとしている。昨年までの厚労省案では、屋内は原則禁煙とされていた。

日本対がん協会参事の望月友美子医師は、これまでの議論からの「後退」だと懸念する。厳格な規制に反対するたばこ業界団体や自民党の規制反対派の声に押され、「法律を作ることが目的化してしまった」ことが原因と分析。「全ての人をたばこの害から守るという本来の目的から外れてしまった」と指摘する。

国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は2010年、たばこのないオリンピックを目指すことで合意。それ以降のオリンピックでは、会場だけでなくレストランなどを含む屋内施設が全面禁煙の都市で行われることが慣例になっている。

望月氏は「たばこのない空間でオリンピックを迎えようという目的は、これでは達成できない。日本が悪い例を世界に示してしまう懸念がある」と話す。

規制派の自民党参院議員・古川俊治氏は、この骨子は「やむを得ない妥協点」だったと認める。医師でもあり弁護士でもある古川氏は「厚労省として、法律を作りたいということは、たばこ推進派にも配慮したものにしなければならないとの認識だろう」と述べた。

古川氏も、このままでは2020年東京オリンピック・パラリンピックが過去10年の開催国と比べ、たばこ規制という観点からは「相当見劣りするものになる」との認識だ。

昨年までの厚労省案がたばこ規制に厳格だった理由の1つは、8月まで厚労相だった塩崎恭久衆院議員が妥協を許さない規制派だったことがある、と多くの関係者が指摘する。後任の加藤勝信厚労相は、たばこ規制により消極的だといわれる。

小規模飲食店などで構成される東京都飲食業生活衛生同業組合の宇都野知之事務局長は、今回の骨子について「一歩前進。昨年までと比べれば天と地の違い」と歓迎する。宇都野氏は、規制が緩くなった理由について「業界が一致団結して署名活動などした効果が出た。理解いただけたと思う」と話す。

同組合の会員は約1万店、業態はスナック、レストランなどでほとんどが100平方メートル以下の小規模店だという。

古川参院議員によると、3月上旬には法案が国会に提出される見込み。それまでに自民党内では禁煙措置の対象から除外される小規模店の定義などについて議論が行われるという。

これまでに「150平方メートル以下」を除外する案などが出されているが、東京都の調査によると、都内の飲食店の9割は150平方メートル以下とされ、この基準が適用された場合、都内のほとんどの飲食店が規制の対象外となる。

古川氏は「これから議論になるところだが、150平方メートルでは広過ぎるだろう。ただ、どこかで線を引かないと、喫煙室を設置できない、小さいスナックにとって、禁煙措置はつぶれろということになってしまう」と話した。

(宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

 
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