[ワシントン 2日 ロイター] – 米労働省が2日発表した1月の雇用統計は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比20万人増と、市場予想の18万人増を上回った。
賃金は前年比で2009年6月以来の大幅な伸びとなった。
今年は労働市場が最大雇用状態に達する見込み。賃金の伸びは物価上昇のペースが上がるとの見方を後押しする。
失業率は前月から横ばいの4.1%で、17年ぶりの低水準だった。市場予想と一致した。1時間当たり賃金の平均は0.3%(9セント)上がり、26.74ドルだった。17年12月は0.4%上がっていた。1月の前年同月比は2.9%増と、09年6月以来、8年7カ月ぶりの大幅な伸びとなった。12月は2.7%増だった。平均週労働時間は12月の34.5時間から34.3時間に減った。
底堅い雇用統計は、米経済が18年に好調なスタートを切ったことを示す。エコノミストらは、国内外の需要が雇用増加を促したと言う。
FRBは昨年は3回の利上げを実施。今年も利上げ回数は3回になるとの見通しを示している。今回の雇用統計が好調だったことで、FRBがやや積極的になる可能性も示された。
BNYメロン(ボストン)のシニア世界市場ストラテジスト、マービン・ロー氏は「FRBは労働市場は完全稼動状態に近づいており、経済指標に賃金とインフレ圧力が表れ始めたとの認識を示しているが、今回の雇用統計はFRBのこうした見方を裏付けるものだった」と指摘。「3月の利上げがほぼ確実視されるなか、市場ではそれに続く年内2回目、3回目、さらには4回目の利上げに意識が移っている」と述べた。
ただ、職探しを諦めた人や正社員を希望しながらパートタイムで就業している人などを加えたより広義の失業率は8.2%と、0.1%ポイント上昇。労働市場にはなおスラック(需給の緩み)が一部存在していることが示された。人種間の格差も存在しており、アフリカ系米国人の失業率は7.7%と、6.8%から上昇。白人系米国人の約倍の水準となっている。
米議会は12月、トランプ政権の1兆5000億ドル規模の減税法案を可決。30年ぶりの大規模な税制改革となった。ただエコノミストらは、労働市場がほぼ最大雇用状態にある中でこうした政策の雇用押し上げ効果は限定的だとみている。トランプ大統領と与党共和党は、法人税を35%から21%へ引き下げることを含む政策が雇用を創出し経済を押し上げると主張している。
米民間雇用調査会社のチャレンジャー・グレイ・クリスマスによると、減税政策を受けて雇用を増やすと発表している企業は1月末時点で7社のみだ。米アップル<AAPL.O>など7企業は合わせて約3万7000人採用するとしている。
1月の就業者数は、過去3カ月間の平均である19万2000人増を上回った。労働人口の伸びに対応するためには月に7万5000人から10万人増える必要がある。
労働市場が最大雇用状態になる中、就業者数の伸びは今年、ペースが鈍化するとみられる。適切な人材を見つけることが困難であると報告する企業が増えている。人材確保に向けて企業は賃金を著しく上げるだろうとエコノミストらは述べる。
1月は18州が最低賃金を増やした。1月の賃金の伸びはこうした要因も影響しているとみられる。減税も背景にあっただろう。コーヒーチェーン世界最大手のスターバックス<SBUX.O>や物流大手フェデックスなどは減税によってできた資金を従業員の賃上げに充てると発表している。
小売り大手ウォルマート・ストアーズ<WMT.N>は2月から、米事業において時給ベースで働く従業員の最低賃金を上げる。賃金の上昇ペースはさらに加速するだろう。賃金の年間の伸び率は現在3%に近い。物価が米連邦準備理事会(FRB)の目標とする2%に達するために必要とエコノミストらがみなす水準だ。
FRBは1月31日、物価が今年、目標に近づくことに前向きな見方を示した。FRBは政策金利を据え置いた上で労働市場が「引き続き底堅さを増した」としたほか米経済が「好調なペースで伸びている」と述べた。市場は3月に利上げを見込んでいる。
1月の雇用統計では人口の集計方法を改めた。また、季節調整の方法も改め過去の数字を改定。
改定の結果、17年3月の就業者数は当初発表よりも14万6000人分多かった。
17年に失業率は0.7%ポイント低下した。18年末までに3.5%まで低下するとエコノミストらはみる。
1月の雇用増は広範の部門にわたった。製造業は1万5000人増。12月は2万1000人増加していた。国内外の需要が製造業の追い風となっている。ドル安もまた、米国で製造されたモノが海外で割安となるため、好材料となっている。
建設業は3万6000人増。異常な寒波に見舞われる気候だったにもかかわらず底堅く伸びた。12月は3万3000人増加していた。小売業は1万5400人増。前月の2万5600人減から持ち直した。
政府部門は4000人増。3カ月ぶりにプラスとなった。専門・業務サービスと娯楽・観光業、ヘルスケア・社会扶助も増加した。