[ワシントン 1日 ロイター] – 米ホワイトハウス高官は1日、米大統領選へのロシア干渉疑惑を捜査する連邦捜査局(FBI)と司法省の内部に、トランプ大統領に対する偏見があると非難する内容の共和党機密文書について、公開を容認することを議会に通達する見通しであると明らかにした。
以下に、騒動のポイントをまとめた。
<機密文書には何が書かれているのか>
4ページにわたるこの機密文書は、下院情報特別委員会のデビン・ニューネス委員長(共和党)の依頼で、同委員会の共和党議員らが作成したもの。
関係筋によると、同文書は、FBIと司法省が昨年3月、大統領選でトランプ陣営の顧問を務め、ロシアと何度も接触している石油業界のコンサルタント、カーター・ペイジ氏に対する通信傍受を認める令状を延長しようと、外国情報活動監視裁判所の判事を誤った方向に導いたとして非難している。
また文書は、民主党全国委員会が一部資金提供を行い、英国の元諜報員クリストファー・スティール氏がまとめたトランプ氏とロシアとの関係に関する調査報告書に基づいて令状を要請していることを、FBIと司法省が判事に伝えなかったと非難している。
スティール氏の報告書には、トランプ氏とロシアとのつながりについて、物議を醸すような内容も数多く含まれている。トランプ氏は同報告書を「偽物」と一蹴し、自身の選挙陣営とロシアとの共謀疑惑を否定している。
共和党議員は、スティール氏の報告書と民主党全国委員会との関係や、オバマ大統領在任中に行われたトランプ氏側近への監視を重大視しており、民主党こそ連邦政府や議会の調査を受けるべきと主張している。
<文書はなぜ問題か>
民主党は、共和党がモラー特別検察官率いる捜査の信頼性を損なうためにこの機密文書を利用しかねないとしている。モラー氏の捜査は、政権を脅かしかねない同捜査に対し、トランプ大統領が司法妨害を行った可能性についても調べている。
民主党議員は、トランプ氏側の関係者が同氏を守るために文書を利用し、モラー特別検察官や、同氏を任命したローゼンスタイン司法副長官を解任する口実を大統領にを与えようとしているとみている。大統領は、昨年5月にコミーFBI長官(当時)を解任している。
<文書が公開されたらどうなるか>
機密文書の公開は、民主党と共和党の分断を悪化させ、ロシア疑惑に関する議会調査でどのような結果が出ようとも、その信頼性を失わせる可能性がある。
また、長年保たれてきた議員と情報機関との協力関係を弱体化させる可能性がある。これまで情報機関は、絶対に公にはしないという了解の下で、議会と機密情報を共有してきた。FBIは、共和党機密文書は正確性に問題があるとして「深刻な懸念」を表明した。司法省も、文書公開は機密情報を危険にさらす恐れがあるとしている。
<情報特別委員会の役割とは>
モラー特別検察官が刑事捜査を行う一方、議会では、下院の情報特別委員会など3つの委員会がロシア疑惑を調査している。
機密文書を巡る論争は、情報特別委員会内における民主党と共和党の対立をさらに悪化させている。委員会メンバーの民主党議員は、共和党議員がトランプ大統領を守るため、スティール氏の報告書とペイジ氏の通信傍受に執拗にこだわっていると非難。それに対し、共和党議員は不正を公表したいだけだと反論している。
委員会メンバーの民主党議員は共和党文書に対抗する文書を作成したが、共和党側が投票で公開を阻止した。
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)