米大統領、演説で株式市場に言及せず 株急落で饒舌一変

[ワシントン/ニューヨーク 5日 ロイター] – トランプ米大統領は5日にオハイオ州で行った演説で、株式市場についてまったく言及しなかった。株高局面では饒舌に自身の「手柄」を誇っていたが、相場急落とともに一転して沈黙してしまった。

トランプ氏は先週の一般教書演説で「株式市場は連日最高値を更新し、この短期間に8兆ドル以上の価値を生み出した」と胸を張ったばかり。1月7日にはツイッターに「株式市場は最高値水準を付けるというだけでなく、現在と将来の数多くの雇用を生み出すというメリットをわが国にもたらしてくれている」と投稿した。

また1月17日のロイターのインタビューでは「民主党が大統領選に勝っていたら、株価は当時の水準から50%下がっていただろう。今は同じだけ上がっている」と語った。

今回の株価急落でトランプ氏本人はまだコメントしていないが、ホワイトハウスは声明で、トランプ政権は「長期的な経済のファンダメンタルズ」を重視しており、米経済成長は強まっていて失業率は歴史的低水準にあり、賃金は上がっている点を踏まえるとファンダメンタルズは異例なほどしっかりしていると強調した。

またトランプ氏のオハイオ州の演説に同行したシャー副報道官は大統領専用機内で記者団に「見ての通り市場は短期的に変動し、われわれ全員がそれを承知している。しかし経済のファンダメンタルズは非常に強固で、正しい方向に進んできた」と述べ、株式市場に関する政権としてのメッセージの軌道修正を図った。

こうした変化は、かつての政権高官が苦言を呈したように大統領は株価の動きに直接コメントすべきではないという方針を、トランプ氏が今後受け入れる兆しかもしれない。

クリントン政権とオバマ政権で国家経済会議(NEC)議長を務めたジーン・スパーリング氏は、トランプ氏はここ数カ月、株式市場に軸足を傾け過ぎたと指摘。「クリントン大統領の下で株価が3倍になっても、クリントン氏の見方は、政策と日常生活問題に関するメッセージの発信重視であり、株式市場に注目すると実体経済に配慮が向かなくなると考えていた」と説明した。

 
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