バチカン、中国任命司教を認定 国交再樹立向け妥協か

このほど中国当局が任命した司教を、バチカンが認定すると報じられた。バチカン側の公式発表はまだない。専門家は、事実であれば、バチカンが実質上、宗教信仰を認めない中国当局に妥協したとみており、「悪魔との取引だ」と手厳しく批判した。

カトリック系メディア「アジア・ニュース」英語電子版(1月22日)によると、中国広東省汕頭市教区司教の荘建堅氏(88)は昨年10月、バチカンから2回も退任を求められた。同年末に、当局は荘司教を北京まで連行、当局が設立した「愛国教会」のトップと宗教当局幹部との面談を強要した。バチカンの関係者も同席していたという。当局とバチカンの関係者は、荘司教に対して、司教の職位を、当局が公認の司教・黄炳章氏に譲るよう迫った。黄氏は、全国人民代表大会(国会相当)の代表も務めている。

また、福建省閩東教区司教の郭希錦氏は、当局の「愛国教会」への加入を拒否したため、昨年のイースター以降1カ月拘束された。拘束中、当局は郭氏に対して、司教職位を当局が任命した詹思禄氏に渡すよう、関連書類に署名を求められたという。郭氏はその後、司教助手に降格された。

中国時事評論家の李善鑒氏は、バチカンが2つの理由から、中国当局任命の司教を認可したと分析する。「1つ目は、バチカンは中国当局との国交を正常化しようとしているからだ。2つ目は、中国当局の支持があれば、中国国内の信者数が増加するだろうとバチカンが期待している」と話した。

バチカンは1951年に中国共産党政権と国交断絶した。またこれまでバチカンは、中国当局任命の聖職者が違法であるとの認識をしてきた。現ローマ教皇フランシスコが2013年就任以降、バチカンは中国当局に対して融和ムードを見せ始めた。

李氏は、バチカンが中国当局に譲歩したことが事実であれば、宗教の存在意義に反した行為だと批判した。

「中国共産党政権は、宗教自体を敵視している。人々の信仰を壊滅させることが、当局の最終的な目的だ。カトリック司教の任命や、当局の言いなりになっている宗教を認めること自体が、徐々に宗教の真義を改ざんし宗教を消滅させる一環だ」

また、李氏は「無神論を唱える共産党への譲歩は悪魔との取引だ」とバチカンの対応を切り捨てた。

一方、在米中国人ジャーナリストの胡平氏は、バチカンの対中への融和姿勢は「バチカンの権威と信仰の純潔さを汚したと同時に、中国共産党を助長した」と指摘した。

「中国当局は従来、欧米諸国を利益で籠絡してきた。バチカンにも同様なことを続けている。現在中国当局が各国に強い影響力を発揮しているのは、今まで国際社会の対共産党の宥和政策と関係している。国際社会は反省しなければならない」と胡氏は話した。

米紙・ウォールストリート・ジャーナル(2日)によると、バチカンは中国当局が独自に任命した計7人の司教を認定したという。

「愛国教会」と「地下教会」

1949年、政権を取った中国共産党は海外勢力による浸透を警戒し、ローマ教皇を最高指導者とするカトリック教徒を弾圧してきた。一方、プロテスタント系キリスト教は生き残りを図るため、当局に「中国人が自ら教会を運営する」との方針を示し、共産党が公認した「三自愛国教会」の管理のもとで活動している。三自とは自治,自養,自伝の3つで、自治は政治的自立、自養は経済的自立、自伝は伝道の自主性をいう。

一方、共産党の監視に嫌気を指す教徒は、「地下教会」を組織した。現在中国に6000万人のキリスト教の信者がいると推定されている。その三分の二は政府に公認されていない「地下教会」に属している。近年、共産党は地下教会に対する取り締まりを強化し、投獄された教徒が拷問などの迫害を受け、国際社会でも問題視されている。

ローマ・カトリック教会香港教区の元司教だった陳日君枢機卿は、バチカンの共産党への譲歩は「地下教会の教徒を裏切った」ことだと批判した。

(翻訳編集・張哲)

大紀元日本、EPOCH TIMES JAPAN より転載

http://www.epochtimes.jp/2018/02/31183.html

 
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