河野太郎外相は今年1月に初めて中国を訪問した際、両国の関係改善に前向きな姿勢を示しました。しかし帰国後の翌日、小売大手・無印良品の中国現地法人のカタログに、問題のある地図が掲載されたとして、中国当局が廃棄処分を命じました。
中国の国家測量地理情報局は1月29日、「問題のある地図」について全国調査を実施しました。処分に至った8件には、日本の無印良品も含まれています。
当局は、無印良品の2017年秋冬家具カタログの地図に尖閣諸島(中国名:釣魚島)と台湾が中国の領土として表記されていないことを問題視し、「重大な誤りがある」と主張しています。
いっぽう無印良品は、昨年10月に指摘を受け、当局の指示通りカタログを廃棄したと発表しました。
今回のトラブルは、河野外相が中国から帰国した翌日に明るみになりました。日中関係に改善の兆しが見えはじめたと思われていました。中国メディアが、両国は関係改善、経済協力、企業間交流・提携などの分野で共同の認識に至ったと報じた矢先の出来事です。
日本の大手メディア各社は相次ぎこの問題を報道ました。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は定例記者会見で「中国側の独自の主張に基づく措置は全く受け入れられない」と述べました。
ニューヨーク中華研究所 郭岩華・主任
「無印良品は中国で200店舗以上展開しているため、現時点で撤退はできないでしょう。他の日本企業は影響を受けるでしょう。政治的リスクから中国への投資を見直す企業が多いはずです。日中関係が冷え込むと、些細な問題でも企業に影響を及ぼします」
日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、中国に進出した日本企業の事業拡大意欲は2012年から急低下しています。同年9月、尖閣諸島の領有権をめぐり、日本企業が襲撃されるなど中国で反日デモが広がりました。この流れで、2015年に日本企業の事業拡大意欲を示す数値は過去最低となりました。2015年から、シャープ、ダイキン、TDK、ユニクロなど大手各社が、中国でのすべての事業または一部事業の廃止に乗り出しています。
日本企業だけではなく、韓国のロッテや、アメリカ資本のマリオットホテル、スペインの衣料品大手ZARA、オーストラリアの粉ミルク大手のベラミー、カンタス航空などの外資系企業も、中国政府から政治的圧力を受けています。