ピーチにバニラを統合、ANA傘下のLCC アジア中距離線で攻勢

[東京 22日 ロイター] – ANAホールディングス(HD)<9202.T>は22日、傘下の格安航空会社(LCC)で連結子会社のピーチ・アビエーション(大阪府泉南郡)と完全子会社のバニラエア(千葉県成田市)を統合すると発表した。2018年度下期から統合に向けたプロセスを始め、19年度末をめどにピーチの基盤へバニラを統合させる。ブランドはピーチに一本化し、規模拡大と効率化を図る。

前期の売上高はピーチが約517億円、バニラが約239億円。両社を合算すると約756億円で、LCC国内首位のジェットスター・ジャパン(約528億円)を上回り、最大となる。統合後は50機超の機材と国内・国際線合わせ50路線以上の規模となる見込みで、20年度には売上高1500億円、営業利益150億円規模を計画する。

ANAHDは20年をめどにアジア全域でLCCによる片道7時間から9時間以内の中距離路線を展開する方針を打ち出しており、統合後の新ピーチがアジアでの中距離路線の展開計画を進める。バニラも台湾や香港などに路線を持つが、ピーチのほうがアジアで多く運航している。国際線での外国人比率が7割と多く、海外での認知度がより高いピーチブランドでアジア市場を攻める考え。

同日会見したANAHDの片野坂真哉社長は、20年の東京五輪を控えて競争環境が激化しており、海外勢も活発に動いていることが「刺激になった」と述べ、以前から統合は検討していたが、同社がピーチを連結子会社化した昨年2月の時から「(統合への)思いが強くなった」と説明。LCC2社の業績が改善する中、訪日観光客需要、地方創生などの機運も高まっており「ベストなタイミングと判断した」と語った。

会見に同席したピーチの井上慎一最高経営責任者(CEO)も「厳しい競争に生き残るための選択」と指摘。バニラの五島勝也社長も両社を統合し、競合と「伍(ご)して勝負していく体力が必要」と述べた。ピーチは関西空港、バニラは成田空港を拠点としており、重複も3路線と少なく、統合効果は高いとみている。

LCCはパイロットや整備士などの人手不足が成長のボトルネックとなっており、ピーチの井上CEOは、統合しても「その懸念はなくならない」と話す。ピーチは今後も大阪を拠点とするが、井上CEOは、首都圏マーケットが大きく、アジアでの中距離線展開に備え「採用競争力を担保する意味でも、一部機能を東京に移すかもしれない」と述べた。

(白木真紀)

 
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