[ハノイ/香港 27日 ロイター] – 中国海軍の空母打撃群が今週、南シナ海の海南島沖で大規模な軍事演習を行っていることが、ロイターが入手した衛星画像から明らかとなった。
プラネット・ラボ提供の画像から、中国の空母打撃群が極めて重要な通商航路を進航しているのが確認された。中国海軍は毎年恒例の軍事演習の一環だとしている。
台湾の防衛当局によると、中国海軍の空母「遼寧」艦隊は先週、台湾海峡を横断した。
26日に撮影された画像は、少なくとも艦艇40隻と遼寧を囲む潜水艦を映し出しているとみられる。中国が自国の海軍力を大々的に誇示する異例な行動だと一部の専門家は指摘する。
戦闘機を搭載した空母打撃群は潜水艦に先導されているように見える。編隊を組んで進む艦隊は、ハードな軍事演習よりも視覚的なプロパガンダ向きだ。
米ミドルベリー国際大学院の安全保障専門家ジェフリー・ルイス氏は、これらの画像により、遼寧が軍事演習に参加していることを初めて確認できたと語った。
「驚くべき写真だ。私には大きなニュースだ。遼寧が演習に参加したことが確認できる」
同群の目的地や演習期間は不明だ。コメント要請に対する中国国防省からの回答はなかった。
ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)の海上安全保障専門家コリン・コー氏は、規模と範囲の両面で、同演習は異例だと指摘する。
「画像から判断すると、南シナ海の艦隊の一部は北部大連の空母打撃群と常に合流できることを見せたがっているようだ」と同氏は説明。海軍がひそかに取り組んできた艦隊間の相互運用性を誇示したいように思えるとの見方を示した。
中国海軍と沿岸警備隊の軍事力は近年急速に拡大しており、今では南シナ海の広範囲で哨戒活動を行っている。だが、彼らの戦闘即応性や調整能力については、ほとんど知られていない。
空母を通常支援する駆逐艦やフリゲート艦や潜水艦に加え、今回の艦隊にもコルベット艦や高速攻撃艇のほか、燃料を補給する大きな給油船も含まれていたとみられるとコー氏は指摘する。
「大規模な展開力を示す一方、中国人民解放軍海軍の戦闘即応性にはまだ疑問の余地はある」と同氏は言う。
南シナ海の領有権を巡っては、中国のほか、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾が主張している。
最近、ベトナムが中国の圧力を受け、同海域での油田開発を中止するなど、この海域における緊張が再燃する兆しが見え始めたさなかに今回の演習は行われた。
中国はまた、同海域南方のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に建造した人工島の1つの近くで米艦船が先週行った「航行の自由」作戦に対して抗議している。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)