財政健全化、市場の信認確保が重要 政府の取り組み期待=日銀総裁

[東京 3日 ロイター] – 黒田東彦日銀総裁は3日の衆議院財務金融委員会で、政府による財政健全化ついて、市場の信認を確保する重要性を訴えるとともに、政府・日銀の共同声明に沿った持続可能な財政の実現に向けた取り組みに期待感を表明した。

野田佳彦委員(無所属)の質問に答えた。

<出口戦略、部内では議論>

黒田総裁は日本の財政問題について、政府債務残高が「極めて高い水準」にある中で、「政府が中長期的な財政再建、財政健全化について市場の信認をしっかりと確保することが極めて重要」と指摘。

2013年1月に政府と日銀が公表した共同声明において、財政について「持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」と明記されていることや、政府が新たな財政健全化計画を策定していることに触れ、「日銀として持続可能な財政構造の確立に向けた取り組みをしっかり進めていかれることを期待しているし、その状況を注意深くみていきたい」と語った。

政府との共同声明は「現在も有効」とし、「これに沿って政府、日銀は政策を遂行していかなければならない」との認識を示した。

金融緩和を縮小する、いわゆる「出口戦略」については、「部内ではもちろんいろいろな議論はしている」としながらも、物価2%目標の実現が遠い現状で具体的な順序などを議論することは「ミスリードになる」と指摘。市場との対話においては「正常化の状況に立ち至った時に、具体的に方向性を示すことにならざるを得ない」と語った。

<金融緩和の金融機関への影響、「相当、注視」>

超低金利政策の長期化が金融機関経営に与える影響に関し、マイナス金利自体は日銀当座預金の一部に適用されているものだとし、「金融機関の収益に大きな影響を及ぼしているわけではない」と説明したが、マイナス金利を含む現行の強力な金融緩和政策がイールドカーブ全体を押し下げ、「貸出利ざやの縮小などを通じて金融機関の収益に影響を及ぼす可能性がある」との認識を示した。

日本の金融機関は充実した資本基盤を備えていることから、現状では「収益の悪化に伴う金融仲介機能への大きな問題が生じているとは考えていない」としたが、さらに低金利が長期化すれば「累積的な影響が出てくるおそれがある」と指摘。

今後も金融機関の収益動向や、金融仲介機能、金融システムへの影響について「相当、注意深くみていく」と強調した。

(伊藤純夫 編集:田中志保)

 
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