[東京 18日 ロイター] – 東芝<6502.T>のメモリー事業売却が決まったことで、今後はメモリー事業の穴を埋める新たな収益源をどう育てていくかかに焦点が移る。東芝は継続的に収益を生み出せる「リカーリング型」のビジネスに構造転換する方針を掲げているが、同社が軸足を置いているBtoB(企業向けビジネス)はすでにリカーリングモデルの色彩が濃く、どこまで伸ばせるか不透明感も漂う。
東芝は15日、改革に向けた5カ年計画「東芝Nextプラン」の検討方針を公表。その中で、社会インフラ、エネルギー、電子デバイス、デジタルソリューションの4事業を引き続き注力事業と位置付け、リカーリング型ビジネスへの転換を図る方針を示した。
リカーリング型事業とは、製品を売って終わりではなく、売った後もサービス等を利用してもらうことで継続的に収益を上げるビジネスモデルのことで、景気変動の影響を受けにくいといったメリットがある。電機業界ではソニー<6758.T>が一足先に同ビジネスへの転換を鮮明にしている。
ソニーは景気変動の影響を受けやすいBtoC(個人向け)ビジネスが多く、ボラティリティを下げることが大きな課題となっていた。そこで目をつけたのがリカーリング型ビジネスだ。カメラ事業における交換レンズ購入や家庭用ゲーム機「プレイステーション」におけるネット課金など、顧客が継続的にお金を支払う仕組みを構築。売上高に占めるリカーリング型ビジネスの比率はすでに4割程度に達しており、20年ぶりに最高益を更新する原動力となった。
これに対して、東芝のBtoB事業はエレベーターや発電システムの保守・点検などすでにリカーリングモデルの色彩が強い。東海東京調査センターの石野雅彦シニアアナリストは「原子力などはほとんどリカーリングだ。エレベーターや東芝テックのPOS(販売時点情報管理)レジ、複写機もそうで、新東芝の2割くらいはすでにリカーリングのビジネスになっている」との見方を示している。
メモリー事業の売却とリカーリング型ビジネスへの転換はいずれも収益を安定化させる方向に働く。SMBC日興証券チーフクレジットアナリスト、伴豊氏は18日付のリポートで、メモリー事業の売却後も一定の収益基盤が残る上「ボラティリティの高いメモリー事業が抜けることで、収益の安定性が高まることも期待される」などとして「必ずしも悲観する必要はない」との見解を示した。
ただ、足元の業績は一時益を除けば低調だ。2018年3月期決算では、セグメント別で売り上げトップのインフラシステムソリューションは減収減益、同3位のエネルギーシステムソリューションは赤字だった。エネルギーシステムは今期黒字転換を見込んでいるが、売上高は前期比24%減の6400億円と縮小に歯止めがかかっていない。
市場では改革プランについて「堅実な内容だが、実効性とスピード感が未知数だ」(国内証券)と不安視する声もある。東芝は人工知能(AI)やすべてのモノがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)などを組み合わせることでリカーリング型ビジネスを強化していく方針だが、石野氏はその過程で「成長性をどう取りこんでいくか、どう付加価値をつけていくかが課題となる」と指摘する。
(志田義寧 編集:石田仁志)