プーチン露大統領が6月に訪中を控えているなか、中国政府はこのほど、ロシアとベトナムが、中国が領有権を主張する南シナ海で天然ガスの採掘をはじめたことに対して、強い不満をあらわした。
ベトナム沖の南シナ海で、ロシア最大の国営石油会社、ロスネフチ石油がベトナム政府の許可を得て、15日から天然ガス採掘に着手した。ベトナム政府は近年、中国政府の圧力を受け、同海域での採掘許可を自粛してきた。
現場は、中国政府が独自に決めた領有権ライン「九段線」の内側にある。中国外交部の陸慷・報道官は17日の定例記者会見で、記者の関連質問に対し、「いかなる国も両国関係を損なってはならない」と語気を強めて答えた。
「全面的戦略協力パートナーシップ」にある露中両国は通常、水面下で交渉する。今回のように、ロシアを公にけん制するのは、極めて異例なことである。
プーチン大統領の6月訪中を控えているこの時期のこの動きは、両国関係悪化の兆しだという専門家の意見もある。
ロシア科学アカデミー東洋学研究所東南アジア・豪州・オセアニア研究センターのセンター長、ドミトリー・モシャコフ氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して、次の見解を述べた。
「露越両国のエネルギー分野の提携は旧ソ連時代に遡る。今回、ロシアが採掘を取りやめるなら、『中国の圧力に屈した』という印象が持たれてしまうので、進退両難にあるともいえる」
ロシアのペスコフ報道官は、ロスネフチ石油が問題の案件を大統領サイドに事前に報告しなかったと述べた。一方、同社のセチン社長は、プーチン政権下で大統領府副長官兼大統領補佐官や、副首相を歴任した人物で、プーチン大統領の「側近中の側近」とも言われている。
こうした事情から、中国がロシア側の説明にどこまで納得するのか、ロシア政府の今後の出方などが注目されている。