[ワシントン 1日 ロイター] – 米労働省が1日発表した5月の雇用統計は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比22万3000人増と、伸びが加速した。
失業率は0.1%ポイント低下の3.8%と、2000年4月以来、約18年ぶりの低水準まで改善した。これは米連邦準備理事会(FRB)が年末までに達成すると見通しを示していた水準。労働市場が急速に引き締まっていることを示し、物価上昇への懸念が浮上する可能性もある。
市場予想は就業者数が18万8000人増、失業率が3.9%だった。
賃金も底堅く伸び、FRBが今月利上げするとの見方を後押しする。好調な雇用統計は同時に、経済が過熱する可能性を示唆している。
キャピタル・エコノミクス(トロント)の首席エコノミスト、ポール・アシュワース氏は「全体的に米経済は力強い。こうした中、FRBは年内にあと3回利上げするとみている」と述べた。
3月と4月の就業者数は合わせて1万5000人分上方改定された。
1時間当たりの賃金は、5月に前月から8セント(0.3%)増。4月は0.1%増だった。5月の前年同月比は2.7%増と、4月の2.6%増から加速した。
雇用統計に加え、最近発表された個人消費や鉱工業生産といった経済統計も底堅い。経済が年初めに鈍化した後、第2・四半期初めに勢いを取り戻していることを示す。さらに、1兆5000億ドル規模の減税政策や財政出動の効果がこれから出てくるとみられる。ただ、トランプ政権がカナダやメキシコ、欧州連合(EU)からの鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課したことで貿易戦争を巡る懸念が再び浮上しており、経済見通しに暗い影を落としている。
物価上昇率はFRBが目標とする2%をやや下回る水準にある。FRBは3月に利上げした際、年内にあと2回利上げする見通しを示した。
過去3カ月間の就業者数の増加は平均して17万9000人。労働人口の伸びに対応するためには月に12万人増える必要があるとされているが、その水準を上回っている。
労働市場は最大雇用状態に近いか、最大雇用状態とみなされているものの、スラック(需給の緩み)はいくぶん残っているもようだ。求職者を含む働き手の割合を示す労働参加率は62.7%と、4月の62.8%から低下した。3カ月連続のマイナスだった。
一方、働き口がなくて就職をあきらめた人や、正規雇用を望みつつもパートとして働く人を含めた、より広範な失業率は7.6%と、2001年5月以来の低水準まで改善した。4月は7.8%だった。
雇用主が適切な人材を見つけにくい状態の中、雇用の伸びは減速することが見込まれている。これに伴いエコノミストらは、賃金の伸びが著しく加速するとみている。
FRBが30日に公表した地区連銀経済報告(ベージュ・ブック)によると、労働市場は4月下旬から5月上旬にかけて全米にわたり引き締まり状態が続いた。調査先は引き続き、さまざまな技能水準において適切な人材が見つけにくいと報告。トラック運転手と販売員、大工、電気技師、塗装工、情報技術の専門家の人材不足が目立った。
5月の雇用統計の内訳は、建設が2万5000人増。4月は2万1000人増だった。3月は8カ月ぶりに落ち込んでいた。製造業は5月に1万8000人増。4月は2万5000人増加していた。小売りは3万1100人増。娯楽・観光は2万1000人増だった。政府部門は5000人増。4月の3000人減から持ち直した。