[東京 4日 ロイター] – 三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>と三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>が、キャッシュレス経済の進展を見据えて決済インフラビジネスに参入する。キャッシュレスの柱の1つであるクレジットカードの決済インフラは、事実上NTTデータ<9613.T>の独占市場だ。
今後NTTデータと競合する可能性もあり、両社の動向次第では決済コストの大幅な低下も見込まれそうだ。
<事実上、独占状態のNTTデータ>
三井住友は5月、ネット決済大手のGMOペイメントゲートウェーと次世代決済プラットフォームの構築について協議を始めると発表した。
三井住友幹部は「キャッシュレス決済の柔軟な仕組み作りと同時に、コスト削減を図るのが狙い」と話す。
経済産業省のリポートによると、民間最終消費支出に占めるキャッシュレスの比率は20%で、クレジットカードが18%を占める。今後、その他の支払い手段の比率が上がるにしても、現在のキャッシュレス決済の主流はクレジットカードだ。
通常、消費者がクレジットカードを店舗で利用すると、その店舗(加盟店)は、カード所有者の確認や売り上げ情報を専用ネットワークを利用してカード発行会社などに問い合わせる。最終的にカードが利用できるかどうかをチェックする重要なプロセスになる。
この専用ネットワークの運営と、決済情報のやり取りを担っているのがNTTデータが運用する「Cafis」というオンラインシステム。日本では、クレジットカード大手のJCBが独自のオンラインシステムを持っているものの、他のクレジットカードはCafisに依存して決済情報を処理しているのが実態だ。
あるカード発行会社の幹部は「NTTデータが事実上、カード決済インフラを独占していると言っていい。まさに業界の巨人」という。
<巨人・NTTデータと競合も>
しかし、クレジットカード業界にはCafisに対する不満があるのも事実。「品質や安全性には優れている」(先のカード発行会社幹部)との評価もある一方で、「新しいサービス導入のスピードが遅い」(同)などの声もある。
さらにNTTデータは「1件当たりの利用手数料は決して高くない」(担当者)とするが、手数料が重荷になっているとの指摘もある。
三井住友はここに目を付け、これまでCafisに頼っていた決済情報処理をグループ内に取り込むことを狙う。「脱NTTデータ」を進め、決済事務を「垂直統合」することで、これまで同社に支払っていた手数料を削減するとともに、より迅速で柔軟な決済の仕組みづくりを目指す。
一方、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は5月、インターネットの高速配信事業を世界展開する米アカマイ・テクノロジーズと共同で、新型ブロックチェーン(分散台帳技術)を活用した高速で安価な決済システムを開発したと発表した。
MUFGの新決済システムでは、現在毎秒10万件弱にとどまる決済処理を100万件以上に高めることが可能という。コンビニなどでもキャッシュレス決済が普及していることもあり、1件当たりの決済金額は小額化が進み、決済手数料の重みが相対的に増している。「決済コストの削減に大きく寄与する」(広報部)という。
MUFGは19年度以降に、決済インフラ事業としてサービスを始める。ただ「NTTデータと競合することはない。NTTデータに使ってもらえるようなサービスを考えたい」(広報部)としている。
(布施太郎 編集:田巻一彦)