[東京 6日 ロイター] – 政府は5日に決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の原案で新たな在留資格を設けることを明記し、外国人労働者の流入拡大を認める方針を示した。対象を実質的に単純労働者の領域にも拡大し、50万人超の受け入れ増を見込む。外国人労働者の受け入れに関し、専門職に限定していた従来からの方針を事実上、大幅に転換することになる。
政府・与党内には、移民容認につながる外国人労働力の導入には根強い反対論があったが、深刻化する人手不足の解消を求める声が多く、政府の背中を押した格好だ。
安倍晋三首相は5日の経済財政諮問会議で「人手不足が深刻化しているため、一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを早急に構築する必要がある」と指摘した。
その上で骨太方針の原案には「移民政策とは異なるものとして、新たな在留資格の創設を明記した」と説明した。
日本では現在、約128万人の外国人が働いている(厚生労働省調べ、2017年10月末時点)。原案では、人手の確保が難しい業種を対象として新たな在留資格を検討する。
政府関係者によると、農業、介護、建設、宿泊、造船の5業種が想定されており、5分野で2025年ごろまでに50万人超の受け入れを見込んでいる。実現すれば日本で働く外国人労働者が、単純計算で一気に4割増える。
中でも、足元で不足している介護人材の確保などが想定されている。日本語能力の高い外国人介護スタッフが不足しているためだ。
基本は家族を伴わない出稼ぎの形態を想定しているが、専門分野の資格試験に合格するなど専門性を有すると認められれば在留期限を撤廃し、家族の帯同も認める方向だ。
対象業種のさらなる拡大も視野に入っており「警備業界などさまざまな業界から、要望が来ている」(与党関係者)という。
安倍政権は2012年末の発足当初から、外国人労働者の受け入れについて経済界の要望に応えるかたちで検討を重ねてきた経緯がある。
少子高齢化と人口減で労働人口の減少が防げない場合、経済成長は維持できず、財政も破綻する可能性が高まるためだ。
しかし、欧米の移民問題などを念頭に与党内では慎重な意見も多く、労働、産業政策を所管する関係省庁間でも治安の悪化を懸念する声があった。
ここに来て議論が前進した背景には「中小企業の人手不足が深刻化する中で、政府が働き方改革を推進し日本人の労働時間短縮を提唱するには、外国人労働者を国内に招き人手不足の緩和を図ることが自然な流れと政府・与党内でコンセンサスが形成されたため」(政府・与党関係者)という事情があった。
また、外国人観光客が急増しても、国内における外国人犯罪が増えてはいないことも今回の政策決定に追い風となったという。
ただ、課題も残る。その1つが不法労働者の取り締まりだ。法務省によると2018年1月1日現在の不法残留者数は前年比2%増の6万6498人で、4年連続の増加を記録した。
このため今回の原案でも「在留管理、雇用管理を実施する入国管理局などの体制の充実・強化」を掲げている。
(竹本能文 編集:田巻一彦)