[東京 10日 ロイター] – 安倍晋三首相は9日(日本時間10日)、カナダ東部ケベック州のシャルルボワでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)閉幕後に記者会見し、サミットでは貿易をめぐり激しい応酬があったことを明らかにした。そのうえで一時は危ぶまれた首脳宣言が採択された重要性を強調、保護主義に陥らないよう協調行動を取る重要性を指摘した。
一方、12日予定の米朝首脳会談について、トランプ米大統領を支持することでG7が一致したと述べた。拉致問題の解決には日朝の直接交渉が必要として、首脳会談実現に意欲を示した。
サミットは「貿易をめぐって、激しい意見のやりとりがあった」と述べ、米保護主義政策が焦点であったことを認めた。そのうえで「貿易制限措置の応酬は、どの国の利益にもならない」として「自由で公正なルールに基づく貿易システムの発展に向けて努力していくことを確認した」、「会議場の外で首脳だけで、ひざ詰めで直接本音をぶつけ合って合意に至り、首脳宣言として発出できることは大きな意義がある」と述べた。
保護主義台頭の背景に、経済のグローバル化に伴う各国国民の不安があるとして、「経済成長で得られた果実を福祉などに均てんしていく」のが重要とも指摘した。
G7とロシアとの関係について「経済・安全保障といった世界が直面する課題にしっかりと処方箋を示すためには、ロシアの建設的な関与を求めていくことも必要で、私たちもロシアも双方、環境整備に向けて努力していかなければならない」と述べた。
<拉致問題解決すれば、国交正常化・経済協力>
北朝鮮を巡っては「米朝首脳会談の成功を強く期待する。歴史的な会談に臨むトランプ大統領を支持し、その交渉姿勢を支えていくという点でG7は完全に一致した」と語った。同時に「国際社会が一致して、これまでと何ら変わることなく国連安保理決議の完全な履行を求めていくことを、G7の総意として改めて合意した」と述べた。
また、安倍首相は北朝鮮に言及し「豊富な資源があり、勤勉な労働力がある。正しい道を歩めば輝かしい未来がある」とも強調。「日本は、核、ミサイル、拉致問題が解決すれば、日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算して国交を正常化し、経済協力を行なう用意がある。G7のリーダーたちと緊密に連携しながら、北東アジアに真の平和が実現するよう力を尽くしていく」と延べ、日本として将来の国交回復と経済協力について、前向きな姿勢を持っていることをあらためて強調した。
米朝首脳会談で拉致問題がどのように進展するとみているか、との質問に対して、「トランプ大統領との会談で拉致問題について相当時間をかけて話した」「トランプ大統領からも、共同記者会見において、この問題は必ず提起するとの力強い発言があった」と説明。
そのうえで「北朝鮮問題への対応については、米国をはじめとするG7各国や国際社会と引き続き連携をしていくが、拉致問題については最終的に、わが国自身が北朝鮮と直接協議して、解決していく決意だ」と強調した。
日朝首脳会談に関し「これを行なう以上は、北朝鮮の核、ミサイル、そして何より重要な拉致問題の解決につながることが極めて重要。問題解決につながる形で首脳会談が実現すればよいと考えている」と述べた。
(竹本能文 編集:田巻一彦)