米上場中国企業の8割が裏口上場 米映画「チャイナ・ブーム」が暴露

「真実を明かす勇気ある中国人の姿を、ぜひ中国国内の人々にも見てほしい」

アメリカ映画監督のジェッド・ロススタイン(Jed Rothstein)氏はこのほど、大紀元の取材に応じた際、こう語った。

同監督の最新作品であるドキュメンタリー映画「ザ・チャイナ・ハッスル(邦題はチャイナ・ブーム 一攫(かく)千金の夢)」(上映時間84分)は、米株式市場に上場する中国企業のからくりを暴いている。映画は、実在の人物と出来事をもと基に作られた。

2017年9月8日、トロント国際映画祭でプレミア上映された。米フォーブス誌は3月、「ザ・チャイナ・ハッスル」について、2018年度最重要映画作品の1つと評価した。

製作には12人ものプロデューサーがかかわった。中でも、アレックス・ギブニー氏は、2005年の「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?(Enron: The Smartest Guys in the Room)」でアカデミー賞にノミネートされていた。

8割の中国企業は「裏口上場」

同映画では、問題のある中国企業にスポットを当てた。中国企業は国内での業績や財務状況を粉飾した後、経営不振の米国上場企業を買収することで、正当な上場企業に変わっていく、いわゆる裏口上場(back door listing)の実態を明かした。

裏口上場の手法は「逆さ合併(reverse merger)」とも呼ばれる。非上場企業の株主が投資銀行の仲介で、上場企業を買収し経営権を掌握した後、同上場企業を通じて非上場企業の資産などを吸収合併し子会社化することで、非上場企業が間接的に上場し目的を果たす。

映画によると、2006年~12年まで、約400社以上の中国企業が米株市場に上場した。そのうちの8割が裏口上場だという。市場規模は500億ドルを超えている。上場後、いずれの企業も株価は数倍値上がりした。

最も問題となっているのは、経営実態を粉飾する中国企業の実態がほとんど知られていないことだ。投資会社マディ・ウォーターズ・リサーチを率いる著名空売り投資家カーソン・ブロック氏が映画の中でこう指摘した。

ブロック氏は2010年から、米上場の中国企業・東方紙業の株式を独自に調査した。米証券会社は、東方紙業の年商規模が1億ドルとしたが、ブロック氏が中国の現地調査を経た結果、東方紙業の業績は数倍にも誇張されていた。「中国の工場はゴミが散乱し、生産設備もボロボロだった」。

「この状況について、米国の投資家には全く知られていない。株の配当どころか、元本さえ、手元に戻らないだろう」。

ブロック氏はその後、東方紙業が虚偽の財務報告を行っていると公表。同社の株価が急落した。

映画の主人公であるダン・デビッド(Dan David)はブロック氏の調査をきっかけに、もう1社の米上場中国企業「中国緑色農業」についても、現地で雇った調査員が344日間の張り込みを行って調査した。同社も年間利益が1億ドルと宣伝されていた。

張り込み調査で、事業規模は会社紹介の内容と合致していないことが分かった。お茶販売員を装った調査員は工場内に潜入し、従業員が40数人、トラック運転手は1人だけしかいなかったという。投資者が来ると、工場は「電気が煌々(こうこう)と光る」が、いなくなると、また真っ暗になるという。

デビッドは、投資会社FG Alpha Managementの最高情報責任者(CIO)を務めている。

デビッドは、中国企業の粉飾問題によって、米国個人株式投資家が大きな損失を被ると強く懸念している。またデビットは、中国企業の詐欺行為を暴露しようとする外国人投資家や中国人ジャーナリストに対して、中国当局は身柄拘束・投獄などの手段で圧力をかけていると批判した。

勇敢な中国人協力者

ロススタイン監督は、この作品に協力したカナダ国籍の中国系調査員の黄昆氏と匿名希望の中国人経済記者に感謝を示した。「彼らは、中国金融システムの公正化と透明化に尽力したいと考えているからだ」

2011年頃、黄氏が米ヘッジファンド「EOS Funds」 から依頼を受けて、中国国内で、カナダ企業Silvercorp Metalsの中国事業について調査を行っていた。その後、黄氏は北京で警察当局に拘束された。当局は「誹謗(ひぼう)罪」として、黄氏に2年間の懲役を言い渡した。

デビッドは、こういった上場企業の中国国内で行われた財務粉飾に対して、「米国証券当局は監督指導を行う権限がないのが実情だ」とした。

同作品は現在、オンラインシアターで視聴できるほか、米一部の映画館で上映している。

ロススタイン監督は、作品の内容は現在米中通商摩擦の激化と直接に関係しないとした。「しかし、米中両国の国内市場と法体制の違いについて、米政府と米国民が再認識する必要があるという面では、合致している」と述べた。

「中国が、開放かつ自由、さらに国際ルールに従う国になることは、中国国民だけではなく、米国など世界の人々にとって良いことであろう。(経済的に)米中が互いに必要としているなかで、対立を解決する方法を共に模索することは大事だ」と監督は強調した。

(記者・林燕、翻訳編集・張哲)

大紀元日本、EPOCH TIMES JAPAN より転載
http://www.epochtimes.jp/2018/06/34273.html
 
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