[ワシントン/ソウル 4日 ロイター] – ポンペオ米国務長官が今週、6月12日の米朝首脳会談後初めての訪朝に出発するが、米政府は北朝鮮の非核化を巡り「全か無か」のアプローチを棚上げしたもようだ。
ポンペオ氏は6日から7日にかけて1日半、北朝鮮に滞在する。
米朝首脳会談で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、朝鮮半島の非核化に向けて努力することを約束したが、具体的な方法や時期には言及しなかった。
首脳会談以降、米当局者は合意の具対化に取り組んできたが、当局筋によると、進展はほとんど見られないという。一方で、トランプ政権のアプローチには軟化の兆しが出ている。
米国はこれまで、核開発の完全放棄を制裁緩和の条件とし、ポンペオ長官も米朝首脳会談前、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」以外は受け入れないと述べていた。
しかし、ポンペオ氏訪朝の準備として今月1日に行われた米国のソン・キム駐フィリピン大使と北朝鮮側との会談後、国務省の文言から「CVID」という表現が突然消えたもようだ。
国務省が今週発表した声明では、米国の目標は「最終的かつ完全に検証された非核化(final, fully verified denuclearization)」と改められている。
米当局者2人によると、トランプ政権は韓国の助言を踏まえてCVIDの要求を後退させた。
韓国側は、北朝鮮が全ての要求に応じるまで譲歩しないという姿勢に固執するより、段階的な交渉を行う方が成功の可能性が高いと主張している。
当局者の1人によると、米国が「全か無か」のアプローチにこだわれば、北朝鮮問題で中国とロシアの協力を維持することがより難しくなるとの見方も出ているという。
この当局者によると、ソン・キム大使との協議で北朝鮮側は、「完全かつ検証可能で不可逆的」という文言も含め、最終的な合意の主要な条件を定義することをおおむね拒否した。
関係筋によれば、韓国の高官はワシントンで先月行った米当局者との協議で、米国は北朝鮮にCVIDを要求するのをやめ、代わりに「相互の脅威削減」に言及する必要があると伝えた。「数百人」の国際検査官が関わる通常の核・ミサイル施設の査察に北朝鮮が応じる可能性は低いとも指摘したという。
新米国安全保障研究所(CNAS)のアジア専門家、パトリック・クローニン氏は「米国は北朝鮮が向こう数カ月間にどこまで核プログラムを放棄する用意があるか探ろうとしている可能性があり、そのために幾つかの文言を排除する必要があるなら、現時点ではそうする意思があるようだ」と述べた。