[4日 ロイター] – アジア株に対する外国人投資家の売り越しは、6月まで5カ月連続になった。米中両国の貿易摩擦激化により、昨年アジア株に恩恵をもたらした世界的な経済成長の持続性に疑念が生じたためだ。
7カ国・地域の証券取引所のデータによると、6月の外国人の売越額は70億ドル。今年上半期では223億ドルと、少なくとも2013年以降で最大に達した。当時は米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和縮小を示唆して新興国市場が大混乱したいわゆる「テーパータントラム」が起きた時期だった。
それぞれの流出額を見ると、台湾が27億ドル、タイと韓国がいずれも10億ドル強。またインドとインドネシアからの流出規模も大きかった。この2カ国はともにアジアで最も経常赤字額が大きく、輸入原油代金が今後膨らんで外国からの資金確保を迫られることになれば、経済の足場が脆弱な状況に陥る。
上半期のMSCIアジア株指数(除く日本)の下落率は5%超と、やはり13年以来の大きさを記録。同指数は3日、一時9カ月ぶりの低水準に沈んだ。
ゴールドマン・サックスのアナリストチームは1日付リポートで「市場は、米中貿易摩擦がさらに高まって世界のマクロ環境に不透明感が漂うリスク(経済成長の世界同時の弱まりや減速、米金融環境引き締まり継続、ドル高)を織り込んでいるように見受けられる」と分析した。
米政府は6日から、340億ドル相当の中国製品に輸入関税を適用する。中国側も同額の米国製品に関税を課す方針だ。
シュローダーズの新興国市場エコノミスト、クレイグ・ボザム氏は3日付のリポートに「中国製品向けの関税は、米国製品向けよりもずっと新興国に悪影響を与えるもようで、その痛みはアジア新興国に集中しそうだ」と記した。
アジア地域は中国の輸出品に関するサプライチェーンの主要部分を担っているだけに、同国の景気減速がもたらす圧力も市場は感じている。
ただアジア株から資金が急速に流出しているにもかかわらず、一部のアナリストは下半期の株価堅調を予想する。
ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、ラジャト・アガーワル氏は、アジア経済の基礎的条件が足元で改善しているのに、市場からの資金流出はテーパータントラムの際よりも大きいと指摘しつつ、下半期は米国債利回りとドルの上昇の勢いが弱まるとともに、アジア市場に追い風が吹き、資金フローは持ち直すはずだとの見方を示した。
(Patturaja Murugaboopathy、Gaurav Dogra記者)