アングル:与党内に歳出拡大求める声、補正前倒し論も 地方票獲得で思惑

[東京 11日 ロイター] – 西日本の豪雨被害を受けて、与党から歳出拡大を求める声が相次いでいる。今秋の臨時国会で2018年度の補正予算を編成すべきとの声も出始めた。来年4月の統一地方選と夏の参院選をにらんで地方票の獲得を目指したいとの思惑もありそうだ。

「防災は、いくらしてもし過ぎることはない」――。自民党の二階俊博幹事長は10日の役員連絡会後の記者会見でこう述べ、インフラの災害対策の必要性を強調した。

二階幹事長は具体的な額には言及しなかったが、補正予算の前倒し編成も視野に、歳出増を求めたと受け止められている。党内では「老朽化が進んだ施設整備など国土強靭(じん)化が、さらに重要になっている」(幹部)との声が広がる。

西日本豪雨被害を巡って、麻生太郎財務相は10日の閣議後会見で、予備費や公共工事の災害対策費計4200億円を使って対応し、それらが不足すれば補正予算の編成を検討する考えを示した。

「補正編成に向けた作業が、実際に進んでいるわけではない」(政府関係者)ものの、一方で「来年の選挙を見据えた歳出拡大圧力は不可避」(別の政府関係者)との声もくすぶる。

今回の豪雨被害は23府県に及び、台風を除けば異例の広範囲にわたっており、政府が派遣した調査団の報告書などを踏まえ、被害額を推計していく段階で、その規模が当初の想定を超えて膨れ上がる可能性が、政府・与党内でささやかれている。

また、補正予算はここ数年、通常国会の冒頭で審議され、その直前に編成されるケースが多いものの、被害の大きさを勘案し、早期の編成・成立・執行を求める声が与党内にあり、秋に臨時国会を召集し、そこで成立させるシナリオも与党内にはある。

財務省が4日発表した17年度決算は、国債償還や補正予算などに充てる「純剰余金」が9094億円で、16年度の3782億円を上回った。

さらに17年度の税収総額58.8兆円のうち、今後の税収増に寄与する「土台増」は0.7兆円程度で、政府が現時点で59.1兆円と想定している18年度税収も、景気拡大が続けば上振れする可能性もある。

市場からは「国債償還に充てるべきものは、全額返済に回すべきだ」(国内金融機関)との声も出ており、青天井に歳出を増やすようだと安倍政権の財政運営を問われそうだ。

(マクロ政策取材チーム 編集:田巻一彦)

 
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