アジアの安全保障問題や政策などを研究する米民間シンクタンク「プロジェクト2049研究所」は最近発表したレポートで、新疆ウイグル自治区での民族紛争はテロが原因ではないとし、ウイグル族に対する民族抑圧の停止を中国政府に求めるよう、米政府に要請している。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。
レポート「テロは中国政府がウイグル人を制圧する口実」
新疆ウイグル自治区では長年来、ウイグル族によるデモや事件が度々起きている。
2001年アメリカで起きた911同時多発テロ以降、中国政府は、新疆の社会不安は「テロによるもの」と宣言し、国際テロ組織、東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)が関与していると主張した。
今回のレポートは、中国政府はETIMの影響力を誇張し、反テロと反宗教的過激主義を口実に、ウイグル人への抑圧を強めているとして、「新疆の問題は、テロが原因ではない」と断じた。
レポートによると、中国政府は、同自治区に大規模な「政治再教育キャンプ」を設立し、多数の警察を投入しているほか、大規模な監視を実施しているという。
新疆は大規模な監視のモデル区域に
VOAは、「新疆は、中国政府の情報封鎖により孤立無援になっている」と評した。
新疆アクス地区バイ県で働いていたという上海の大学生はVOAに対し、「中国に生きる少数派の苦しい境地」を目の当たりにしたと語った。
その話によると、新疆の一部地域では速達郵便は自宅ではなく、指定郵便局で受け取ることが定められている。受取人が厳しいセキュリティーチェックを受け、指紋を採取される場合もある。
このように情報は厳しく封鎖されている。彼の同僚はソーシャルメディアで友人にこの事に関する話を漏らしただけで、懲戒免職されたという。
今年2月のニューヨークタイムズ紙の報道によると、中国当局は民族、宗教、パスポートの有無、逮捕歴のある人との交友関係などの特定項目で新疆市民全員に点数をつけている。「安全ライン」に達していない人は、行動の制限、ひいては収容されて「再教育」を受けることになる。