[ロンドン 24日 ロイター] – ロンドンの金融街「シティー・オブ・ロンドン(シティー)」の行政責任者キャサリン・マクギネス氏は24日、議会EU離脱委員会への証言で英国の欧州連合(EU)離脱によって短期的に金融業で最大1万2000人の雇用が失われるとの試算を公表した。長期的にはより多くの雇用がなくなると指摘した。
雇用喪失は最低でも3500人との試算だ。英国では200万人以上が金融業に就く。そのうちロンドンに39万6000人が集中している。
銀行や保険会社、資産運用会社は、英国が19年3月にEUを離脱した際にEUの顧客へサービスを提供し続けられるようにEU域内に拠点を開設している。
シティーは、英国とEUがそれぞれの規制を尊重し協力する相互承認制度に基づいた通商政策を望んでいたが、メイ英首相は12日に発表したEU離脱方針をまとめた白書でその案を見捨てた。英国はその代わりに、金融業にEUが市場アクセスの決定権を持つ枠組みを導入することを提案した。日本や米国はこれを導入している。
英国保険協会のエバンス事務総長は証言で、EUと同等の規制にすることは、英国がEU市場へのアクセスの引き換えにEUの規制を真似し続けるような「規制の受け入れ者」になってしまうリスクがあると指摘した。
政府は白書で放送業界における相互承認制度も見捨てた。英国民間放送連盟(COBA)のミンズ事務局長は、放送業界の政府の提案について、金融業と異なり代替案がないと指摘した。「白書はわれわれにとって、一歩後退した形だ。放送業界が犠牲にされたのか、ただ単に一時的な障壁にぶつかったのか定かでない」と述べた。ミンズ氏は、1200局もの国際的なチャンネルの拠点となっている英放送局は、EUの視聴者へも放送しているが、EUの認可がなければ移転するしかないとした。
白書はモノにおいては、市場アクセスを全面的に認めるように求めている。サービス業はアクセスを減らす代わりにEU規制から離れる柔軟性を求める内容だ。ハイテクの業界団体テックUKでEU離脱政策を担当するジャイルズ・ダーリントン氏は、モノのアクセス同様、ハイテク部門もEUの規制に従う代わりに完全なアクセスが欲しいが、EU規制から離れる柔軟性は必要ないとした。
EU離脱委員会のウィルソン議員は、業界関係者が「物議をかもす証言」をしていると批判した。
エバンス氏はこれに対し、EU離脱が「どうやっても次善策であることは避けられない」と反論した。