[東京 27日 ロイター] – 自民党の石破茂元幹事長は総裁選出馬表明以来4回目の記者会見を27日午後衆議院会館内で開き、初めて選挙公約の全貌を公表した。アベノミクスの核心である金融緩和について、カンフル剤に過ぎないとしつつも、「慎重に継続する」と述べた。安倍晋三首相への個人批判を連想させるとして撤回観測の出ていたスローガン「正直・公正」(訂正)は堅持すると強調した。安倍首相が発議を急ぐ憲法改正については急がない姿勢を繰り返した。
<金融市場不安定化など対応で日本版NEC>
石破氏は、安倍首相が正式な出馬表明を26日まで遅らせるなかで、記者会見を立て続けに開催してきたが、公約の全体像を示したのは今回が初めて。
10日に出馬表明して以来、青と白のロゴで「正直・公正」(訂正)と書かれたポスターを掲げ、森友・加計問題を念頭に行政の信頼回復を訴えてきた。首相の個人攻撃との批判を受け、撤回するとの報道が相次いだが、石破氏は「政治家になって以来の公約。変えるつもりはない」と明言した。
経済・財政運営を巡っては「デフレから脱却する政策は継続する」とし、一部市場関係者に広がっている引き締め観測をけん制した。アベノミクスの「異次元の金融緩和で株価が上昇、大企業の業績が極めて好調なのは素晴らしい」としつつ日銀が資金供給量のマネタリーベースを3.5倍も拡充しても物価は目標の2%の程遠い状態と指摘。「カンフル剤の効果はいつまでも続くものでない」とし、地方創生のための政策に軸足を移す姿勢を示した。
同時にカンフル剤を突然打ち切れば激甚な影響を与えかねず、金融緩和も「慎重にこれからも続けなければいけない」と強調した。
2019年10月に予定されている消費増税については「やらなければいけない」とする一方、「十分な環境を早急に整備する必要がある」と延べ、増税に耐えうる経済力の確保を重視した。
経済戦争や金融市場の不安定化に対応するため日本版NEC(国家経済会議)を創設するとした。地方創生のため、「創生推進機構」を設立し、官庁や企業の地方への人材移転を掲げた。専任大臣を置く形での防災省の設置も盛り込んだ。
<憲法改正より日米地位協定改正が重要>
外交は「国連重視を基軸としつつ東アジアの安定に貢献する」とし、「日米安保を維持しつつ、日本の平和と独立は日本が守る当然の体制を目指す」とした。
北朝鮮との関係では、拉致問題や核・ミサイル問題は「圧力だけで解決しない」とし、東京と平壌で連絡事務所を開設して拉致問題のみならず両国で可能な分野から徐々に議論する必要性を強調した。
今年に入り北朝鮮が非核化に向け姿勢を軟化した理由は「中国との同盟関係が再確認されたから」と分析し、日米の圧力外交のみが要因ではないと説明した。
安倍首相の3選を支持している麻生派は27日、2019年夏の参院選までの憲法改正の国民投票を行なうよう提言したが、石破氏は憲法改正の時期について「スケジュール観ありきではない」との従来見解を繰り返した。
会見後には記者団に対し、米軍の日本防衛義務の一方、日本が米国に基地を提供する義務が非対称的とされる日米地位協定改正が憲法改正よりはるかに重要と強調した。