8月〜9月が旬のみずみずしい梨、冷やして食べると暑さも吹き飛びますよね。ところで、梨が薬として使われることを知っていますか? しかも、一般的に煎じるなどの方法ではなく、そのまま食べて治すのです。梨に漢方の効果があるとは知りませんでしたね。では、昔の人はどんな不具合の時に梨を食べて治したのでしょうか。台湾の漢方医師・胡乃文氏は次の物語を紹介してくれました。
昔、ある役人が水をいくら飲んでもノドの渇きがとれない「消渇(しょう かつ)」という病にかかりました。医者から、余命30日を宣告され、仕事を辞めてしおしおと帰郷することにしました。道中、別の医者に出会い、症状を告げると、「カゴ2つ分の梨を用意して、全部食べれば治りますよ」とアドバイスを残して去りました。役人は指示通り、毎日梨を食べました。すると、50数個の梨を食べたところで、病の症状が消えたといいます。
なんだか不思議に聞こえますが、中国の漢方や薬草について解説する書籍、『本草備要』の中で梨について、「肺を潤わせ、心臓を涼める。痰を解消し、熱を鎮める。渇きを止め、酒を分解する。大腸と小腸の働きを助ける」と記載しています。文字通り、梨は喉の渇きを解消してくれて、熱が収まるのですね。
日本でも弥生時代から食べられていたと言われる梨、その約90%が水分です。さらに体に必要とされるミネラルの中のカリウムという成分が多く、血圧の上昇を抑えてくれます。そして、梨に含有される糖アルコールの一種でソルビトールは甘く冷涼感を有し、ノドの消炎効果や解熱作用があるので、夏バテや夏風邪に良いと言われているのですね。
猛暑を振るうこの夏、水をたくさん摂るのももちろんですが、季節の果物は人間にとって最適な水分補給にもなるんですね。栄養成分と一緒に水分たっぷりの梨で体を労わり、残暑をより健康的に過ごしましょう。