[東京 29日 ロイター] – ソフトバンクは29日、主要な動画サービスやSNS(交流サイト)を使っても契約したデータ容量にカウントされない新サービスを始めると発表した。毎月50ギガバイトまで利用できる料金プランに適用する。
導入するのは「ウルトラギガモンスター+(プラス)」。9月6日に申し込み受け付けを始める。「ユーチューブ」や「AbemaTV」といった動画サービスや「LINE」や「Facebook」といったSNSなど8つのサービスが定額で使い放題となる。
料金は家族4人以上で使用するなど各種割引を適用すると月3480円から。従来は月6000円からだった。各種割引がない1人契約の場合は月7480円となる。
新プランはスマートフォン代金の割引サービス「月月割」との併用はできない代わりに、通信料を引き下げた。
会見した榛葉淳副社長はスマホ代を含めた支払い総額について「端末価格にもよるが、基本的には従来と同等か、もしくはそれよりお得になっている」と説明。通信料については「従来より25%から30%超くらい割引されている」と語った。
携帯電話通信料を巡っては菅義偉官房長官が「今より4割程度下げる余地がある」と発言したことで、業界全体が対応に追われている。榛葉副社長があえて割引率に言及したのは、官房長官発言を意識したものと言えそうだ。
ただ、榛葉副社長は、価格だけでなく、質も考える必要があるとして「トータルで議論していくことが大切ではないか」とも付け加えた。
<分離プラン3社出揃う>
これまで携帯電話会社は通信サービスと端末代のセット販売が中心だった。高額なスマホを安く買えるように、通信料からスマホ代の一部を割り引いていたが、政府内には「これが料金を不透明にし、通信料の高止まりを招く原因になっている」との批判があった。
こうした批判を受けて、KDDI(au)<9433.T>とNTTドコモ<9437.T>は昨年、端末代を割引しない代わりに通信料を安くする、いわゆる分離プランを導入した。今回、ソフトバンクも2社に追随した格好となる。
政府内にはスマホ代が定価販売になれば、スマホの割引余力に乏しいMVNO(仮想移動体通信事業者)も大手3社と同じ土俵で戦えると期待する声も少なくない。さらにスマホメーカーの競争原理も働きやすくなり、長い目で見ればスマホ価格の低下につながるという見方もある。
通信サービスも同様に競争で料金の低下が期待できる。ただ、公正取引委員会の調査では、調査対象の大手携帯電話会社の契約者の約半数が通信品質や通信料金にかかわらず、乗り換えるつもりはないと回答している。市場の活性化につながるかは不透明感も漂う。
<ネット中立性>
今回、ソフトバンクが始める特定サービスのデータ通信料を無料にするプランは「ネットワークの中立性」との観点で議論されることが多い。
通信事業者が特定のサービスを優遇すれば、同種のサービスを提供する他社が同じ土俵で戦えなくなり、長い目で見れば事業者の寡占化につながり消費者は不利益を受けかねないといった問題をはらんでいる。
これについて榛葉副社長は「きょうは8社だが、今後はオープンに他のコンテンツベンダーとも話し合っていく」と述べ、対象サービスを広げてく考えを示した。
*新プランに関する情報を追加しました。
(志田義寧)