舜は中国古代神話伝説上の五帝の一人で、幼少時お父さんや継母のイジメを受けても、なお親孝行をすることで名を馳せました。
舜は名を重華(ちょうか)といい、母を早く亡くし、父親の瞽叟(こそう)と後妻との間に男の子が生まれ、象という名前をつけました。両親と同様、象も舜に対してとても意地悪でした。父親の瞽叟は象を溺愛し、つねに舜を追い払う機会をうかがっていました。
ある日、瞽叟は納屋にのぼって屋根を修理するよう、舜にいいつけました。瞽叟は、舜が屋根を修理している隙に、こっそりと納屋に火をつけました。2つの笠を翼のようにして使い、屋根から降り立った舜は、無事火事から逃れることができました。
それから間もなく、舜は井戸を掘るよう瞽叟に命じられました。また殺されそうになるかもしれないと思った舜は、外に通じる横穴をこっそりと掘りました。舜が深く深く掘り進めていると、瞽叟と象が井戸を土で埋めはじめました。舜を生き埋めにしようというのです。舜は横穴から逃げ出しました。舜は間違いなく死んだと思い、とても満足した瞽叟は象にあとを継がせようとし、また、象は舜の財産を横取りすることにしました。
しかし前回同様、舜が現れて両親にあいさつをし、両親が舜を必要とするならばいつでもお世話をし続けました。弟の象に対しても、優しい心で愛しました。家族全員が舜を殺そうとしていると知っていても、舜は家族にとても忠実でした。その後も、家族が舜を殺そうとすると舜の姿は見えなくなりました。反対に、家族が舜の助けを必要としている時はいつでもそばにいました。
20歳になる頃には、舜はすでにその美徳と他者に与える影響力によって、よく知られた存在となっていました。歴山で舜が畑を耕せば、歴山の農民たちは自分たちの土地の境界線についてのつまらない争いごとをやめ、雷澤で魚釣りをすれば、雷澤の漁師たちは他の人たちに一番よく釣れる場所を譲ったといいます。黄河沿いにある窯元で働けば、すべての器が完璧に仕上がったといいます。たった3年で、舜が住んでいた小さな村は大きな町へと変わりました。
舜が30歳の時に、時の帝であった堯は自分の娘2人を舜に嫁がせました。そうすれば、家での舜の様子がわかると思ったからです。堯は、自分の9人の息子を舜の友としました。家の外での舜の様子を伺うためです。彼らによる観察の結果はすべて良いものでした。61歳にして、舜は帝となりました。