中国の1500年以上の歴史をもつ仏教名刹、少林拳発祥の地である少林寺 (しょうりんじ)はこのほど、はじめて国旗掲揚式典を行った。中国の宗教事情に詳しい有識者はその背景について、中国政府による宗教の統制がいっそう厳しくなっていると分析した。
寺の公式発表によると、式典には僧侶全員と、地元河南省登封市の共産党主要幹部らが出席。少林寺側は、国旗掲揚は寺の「愛国愛教の主旨・義務」に合致していると釈明した。
少林寺の第30代方丈 (住職)、釈永信 さん(52)は積極的に観光を誘致するなど「少林CEO」「経済和尚」の異名をもつ。共産党政権への忠誠を誓うことから「政治和尚」とも呼ばれ、2003年から政府色濃厚の中国仏教協会の副会長を務めている。2015年ごろ女性問題や公金着服などのスキャンダルが取り沙汰されたものの、追及されることはなかった。
こうしたなか、本来無縁であるはずの政治との関わりや、修行僧の腐敗堕落を危惧する声が強まっている。
中国のインターネット上では、少林寺の国旗掲揚について議論が勃発している。
「有神論者が無神論者の配下になった」「十年以上も前に国旗掲揚をはじめた武当山(道教の名山)よりは、よくここまで耐えてきた」など批判や風刺するコメントが多勢だ。
なかには「党員幹部は仏様に心を開く、仏家弟子は党に心を開く」と、共産党体制内で神仏への信仰が密かに広がっている現状を揶揄する書き込みもあった。
中国共産党の歴史に詳しい有識者は本件の背景について、「中国政府は政権の基盤を守るため国民全体へのマインドコントロールはいっときも緩んだことがない。宗教については、共産党のイデオロギーを浸透させて、飴と鞭を併用して共産党に従属させるのが狙いだ」と分析した。