[東京 5日 ロイター] – 6年ぶりとなる自民党総裁選が7日告示・20日投開票の日程でスタートする。選挙戦は安倍晋三首相と石破茂元幹事長の一騎打ちとなり、すでに国会議員票の8割を固めたとされる安倍首相の3選が有力視されている。
もっとも安倍首相が勝利しても、総裁任期は2021年9月で満了となるため、3選確定と同時にポスト安倍をめぐる党内の動きが活発化する可能性もある。また、今月30日の沖縄県知事選で与党系候補が敗れたり、石破氏が小泉進次郎・筆頭副幹事長の支持を得て善戦するケースが現実となれば、安倍首相の求心力に影響が出かねないとの思惑も党内で渦巻いている。
自民党総裁選は、衆参合計405票の国会議員票と、100万人あまりの党員・党友の得票を405票に換算し直した地方票の合計810票で競う。
安倍陣営が3日に開催した出陣式には、秘書の代理出席を含め国会議員の8割が参加した。石破陣営は石破派20人と参院竹下派などを合わせ、現時点で50人未満にとどまっており、議員票では首相圧勝の勢いとなっている。
2012年の前回総裁選では、地方票に限ると石破氏がダブルスコアで安倍氏をリードした。だが、自民党幹部の1人は「当時の自民党は野党。今は安倍氏の集票力がダントツに強い」と話す。
地方票で石破氏が安倍首相を「逆転するのは難しい」(竹下派幹部)との見方が、党内で多くなっている。
このため石破氏が、どこまで善戦するかという点に関心が集まりつつある。先の竹下派幹部は「200票取れれば(石破陣営の影響力が)変わってくる」と指摘する。
まだ、投票先を明言していない小泉筆頭副幹事長が、石破氏に投票を決め、そのことを投票前に公言すれば、一定の票が石破氏に流れる可能性があるとの声も、ここに来て広がり出した。
総裁選は無記名投票のため、石破陣営は、態度未定議員のほか、岸田派など首相支持を決めた派閥内でも、安倍首相に批判的な議員の掘り起こしを目指す。
もっとも多くの自民党関係者の関心事は、安倍首相の3選後の政権運営だ。早期に首相支持を鮮明にした二階派や麻生派内でも「誰もがポスト安倍時代を色々と考え始めている」(幹部)という。
安倍首相が総裁選を前に、早期の憲法改正発議をあらためて提唱しているのも「求心力維持のため」(永田町ウオッチャー)と冷ややかに見る向きがある。
2019年は春に統一地方選、夏に参院選を控え、自民党が選挙協力に必要な公明党が慎重な改憲を強引に進めるのは難しいとみている自民党議員がかなりいるという。
翁長雄志・前知事の死去による沖縄知事選は、野党系候補による「弔い合戦」の様相となっており、野党系候補が与党系候補をリードしているとの世論調査結果も出ている。
安倍首相は9月末に国連総会出席のために訪米し、トランプ大統領との首脳会談も予定している。11月の中間選挙を控え、トランプ大統領は、二国間自由貿易協定(FTA)や、貿易赤字削減のため自動車・牛肉などで圧力を高めてくる可能性がある。
トランプ大統領が自動車や牛肉などで自国の権益を強く押し出した場合、「蜜月」を強調してきた安倍首相がどのような対応をするのか、与党関係者や関連業界だけでなく「霞が関関係者も注視している」(経済官庁幹部)という。
来年の参院選にも影響を及ぼしそうな、自動車・牛肉に代表される日米通商協議の行方が、3選を果たした安倍首相の命運を大きく左右しそうだ。
(竹本能文)