中国国民が進化する政府のイデオロギーに反発を強めているようだ。中央教育部はこのほど全国の学校を介して学生と保護者の全員に対して、「洗脳目的」と批評される特別番組の視聴を通達したが、インターネット上でブーイングが上がっている。
新学期初日の9月1日午後8時に放送した「新学期の初授業」と題するこの番組は、教育部と国内最大の国営テレビ局CCTVが共同制作したもの。「習近平新時代の中国特色のある社会主義の思想および第19回党大会の主旨を徹底的に実行し、社会主義の核心的価値観を育成して実践する…」が目的で、親子視聴を裏付ける写真の提出を義務付ける学校もあるとか。
保護者の一人は「我々大人は洗脳だとわかっていて、適当に聞き流すが、真剣に吸収している子どもたちがあまりにもかわいそう」と心中を語った。
女性キャスターらが指導部高官の性接待役にされているという噂が絶えず「CCAV」とも呼ばれ、そのうえ、イデオロギー番組が多いことから酷評されている CCTVは、今回の出来事で保護者の怒りの矛先になっている。
ソーシャルメディアなどでは、番組の冒頭で15分間連続放送の広告があったとして、「1億人あまりを翻弄して広告収入を稼ぎまくるのはやめろ」といった内容の書き込みが殺到した。
それに対し、CCTVプロデューサーの王科雅氏はソーシャルメディアで、「ディズニーランドでアトラクション1分間搭乗のため1時間待ちするあなたたち。なぜ (広告放送の)13分間を長く感じるのか・・・」と持論を述べたところ、ネット民の集中反撃に遭った。
「王の論調は、権力者たちの傲慢と野蛮な性分を思う存分に現した。 偏差値は最低レベルであることも明らかだ」
「その程度の教養では、品位のある番組を作れるはずがない」
「口々に『大国』と誇示しているが、外国の笑い者になっている」
「少しでも個人の自由と尊厳を重んじる国なら、洗脳番組の視聴を強制しない」
教育部とCCTVに対して、全国の学生と保護者への謝罪を求める声が高まっている。
教育部の報道官は翌2日午後、「教育部は番組制作に携わっただけで、番組の編成などの諸事項に関わっていない」と責任逃れと捉えられる発言をした。
一方、CCTVの広告部門は同日、「広告放送は長すぎた」と詫びる声明文を発表した。
中国政府御用芸能人といわれるジャッキー・チェン(64)が出演したことにも、異論が上がっている。日本では人気が高かったジャッキーだが、長男は大麻使用で実刑判決、隠し子 (18) を認知しない、裏社会とつながっているなど中華圏ではイメージが失墜している。
スキャンダラスなイメージが定着したCCTVに関する余談だが、共産党最高指導部の元メンバーで、無期懲役刑を服役中の周永康(76)の28歳年下の2番目の妻は、CCTVの元キャスターだった。
ある文化人は「今回の強制洗脳番組の取り巻きはあらゆる面において最悪だ。なにより、嘘で固められたこのような番組を見て育つ子どもはまともな人間になれない」と批評した。