【動画ニュース】ドイツの劇団が上演した『民衆の敵』に中国人が共感、 当局は上演中止命令

このほどドイツの劇団が北京で上演した『民衆の敵』が、中国人の観客から強烈な共感を集め、舞台を見終えた観客が15分もの間「自由を!」と叫び続けました。これに対し、中国当局はただちに上演中止を命じました。

9月6日、ドイツの劇団ベルリン・シャウビューネが北京の国家大劇場で、1882年のイプセンの 戯曲『民衆の敵』を上演しました。

「民衆の敵」は19世紀後半、地元経済を温泉に依存するノルウェーの田舎町を舞台に、地元の医師が工場排水による温泉の汚染を突き止めたことで、人間のエゴが暴露されていきます。医師は新聞でこのことを公表しようと決心しますが、町長らは地元経済が打撃を受けることを恐れて取り合いません。既得権益を守ろうとする地元メディアも黙殺し、住民は目先の利益にとらわれてやはり医師の主張を拒絶、ついには町民が「民主的」に表決し、医師を「民衆の敵」だと糾弾します。

同劇団では舞台を終えると、出演者が観客と交流し、主人公の行動を支持するかと尋ねることが恒例になっています。

劇団総監督のトビアス・ファイト氏はメディアの取材の際、「驚きのあまり言葉を失った」とその時の様子を語りました。観客は次々と主人公を支持し、舞台の出演者に向かって、「我々は言論の自由を欲している」「中国メディアも真相を伝えない」「中国政府も責任を負わない」「中国でも弾圧されている人がいる」などと、15分間に渡り叫び続けたためです。

時事評論家 唐靖遠氏

「観客が深く共鳴したのは、この舞台に現代中国の姿を見たからだ。深刻な環境汚染や他の社会問題は当局が厳しく情報統制を行っており、大衆の盲従および個人の真相追及の困難など、現実はこの舞台よりも厳しい。またこうした対話形式は自然に観客に真の投票権を与えたに等しい。これは中国の実生活には存在しない。劇場という特殊な場所では、長い間抑圧された民衆の心の叫びが簡単に湧き上がる。架空の舞台に真実が現れるのだ」

米メリーランド州「情報戦略研究所」CEO 李恒青氏

「私も大きな衝撃を受けた。今回 人民の声が為政者に届き、彼らは恫喝されてしまった」

同日夜、国家大劇場側は緊急会議を開き、観客との交流を割愛するよう劇団に求めました。しかし二日目も観客から「個人の権利を!自由を!」といった声が挙がりました。

その後、9月13日と14日に南京市で予定されていた公演は、当局によって中止となりました。さらに、中国のソーシャルメディアからも、『民衆の敵』に関するすべてのコメントが削除されました。

ドイツ外務省は、今回の上演中止に対し遺憾を表明しています。中国のネットユーザーも、中国当局が激しい言論弾圧を続ければ、民衆の不満がさらに高まるだけだと、当局のやり方を疑問視しています。

 
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