米国在住の黄万青さんは9月16日、15年前に行方が分からなくなった弟の手掛かりを求め、オーストラリア・シドニーで開催中の「人体標本展」に駆けつけました。黄さんは展示中の人体標本の中に、15年前に行方が分からなくなった弟の遺体があるかを調べるため、DNA鑑定を求めています。
黄さんによると、弟から最後に連絡がきたのは2003年4月19日。それ以来、音信が途絶えたままです。当時、弟の黄雄(コウ・ユウ)さんは、法輪功を 修煉していたことを理由に、上海警察から指名手配されていました。黄さんは、弟が当局の迫害により死亡した後、「プラスティネーション処理」されて人体標本にされたのではないかと疑っています。そのためシドニー警察に対し、展示中の遺体の身元を調査し、DNA鑑定を行うよう求めています。
在米中国人 黄万青氏
「人体標本展の写真を見た時、強烈なショックを受け、落胆した。弟は人体標本の中の1人かもしれない。弟が15年間も家族に連絡しない理由は他に考えられない。信仰を理由に、弟が拷問の果てに殺害され、商業展示されていると考えるたびに、心がナイフでえぐられるように辛い。人体標本展の運営会社が本人の意思で献体に同意したことを示す文書を提供できないのなら、遺体の身元を明らかにするため、展示中のすべての標本と臓器に対するDNA鑑定を要求する」
カナダの人権派弁護士デービッド・マタス氏は、中国当局による臓器狩りを数年かけて調査し、中国で拡大している人体プラスティネーション産業や臓器移植産業は、違法に拘束した法輪功学習者や少数民族などの「良心の囚人」を「供給源」とすることで、急速に成長したと指摘しています。
カナダ人弁護士 デービッド・マタス氏
「中国では膨大な数の移植手術が行われている。これらの移植用の臓器の出所について、中国当局は納得のいく説明を行っていない。このことから、臓器が法輪功学習者など良心の囚人から摘出されていると、我々は結論付けている。人体標本展も似たような状況で、標本にされた人々が誰なのか、納得のいく説明はされていない。拘束された法輪功学習者の多くは、家族に危害が及ぶのを恐れて、当局に身元を明かさない。彼らが獄中で死んでも、遺体の引き取り手は現れない」
共産党政権下の中国では、人体標本展主催者側のいう「身元不明の遺体」は、拘束された良心の囚人である確率が非常に高いとマタス氏は考えています。
カナダ人弁護士 デービッド・マタス氏
「人体標本展を通して、中国で秘密裏に行われている虐殺をある程度うかがい知ることができる。臓器移植の現場を見ることはできないが人体標本展は見ることができる」
「強制臓器摘出に反対する医師の会(DAFOH)」やウイグル人の団体も現場に駆けつけ、支援の声明を発表しました。国連も最近、中国当局が100万人ものウイグル人を違法に収監していることを確認しています。つまりウイグル人も、臓器が強制摘出される危険にさらされています。
豪州ウイグル協会代表 マムティミン・アラ氏
「再教育センターや監獄で虐殺されたウイグル人の遺体は、家族のもとに返されたときに、傷跡が残っていることがある。これは彼らの臓器、 特に腎臓が、強制摘出されたことを示している」
良心の囚人らに対する中国当局の容赦ない弾圧に対し、国際社会からも怒りの声が上がっています。