焦点:中国が資本流出阻止へ「窓口指導」、元の不安定化も警戒

[上海 11日 ロイター] – 中国当局が国内居住者による対外投資を制限する「窓口指導」に乗り出している。米中貿易摩擦の激化を背景に、資本流出と人民元の不安定化に神経をとがらせているもようだ。

貿易摩擦が火を噴いた3月以降、人民元は約10%下落したが、中国当局は相場下支えのための直接的で大規模な介入は控えている。

しかし当局は、本国投資家による対外投資のために開かれた数少ない経路に制限を加えるという、控え目な手法を講じている。

複数の関係筋によると、個人富裕層向けの海外投資の枠組みであるQDLP(適格国内有限責任組合)は、新規認可が棚上げとなっている。また機関投資家向けの海外投資の枠組みであるQDII(適格国内機関投資家)も過去3カ月間、投資枠の新規割り当てが実施されていない。

今のところ、2015─16年のような大規模な資本流出の兆しは見られず、こうした非公式の窓口指導は予防手段のようだ。

しかしアナリストは、当局を警戒させる要因には事欠かないと指摘する。

中国企業と個人投資家による海外への資金移動には強い制限がかけられたままとはいえ、上海と香港間の証券取引を可能にする接続制度が2015年から稼働したことで、外国人が上海市場にアクセスしやすくなっている。

中国が誇る貿易黒字も縮小している。

カリフォルニア大のビクター・シー准教授(政治経済学)の推計では、対米輸出が控え目に見積もって20%減少しただけでも、月間の貿易黒字は80億─100億ドル縮小し、約3分の2になる。昨年1360億ドルに上った海外からの直接投資も大幅に減る可能性がある。

直接投資に比べ、海外からの証券投資はずっと不安定で、あっさりと流れが逆転しかねない。中国国家外為管理局(SAFE)の直近データによると、第2・四半期末時点で中国の対外債務総額は5兆3000億ドルで、うち1兆1300億ドルが株や債券などの証券投資だった。

ドイツ銀行のG10・FX戦略グローバルヘッドのアラン・ラスキン氏は今週のノートで、人民元安が続けば「自己実現的な資本流出が起こり、制御不能になるとの懸念が高まりかねない」と言う。

カリフォルニア大のシー氏は、貿易戦争の影響を和らげる手段として人民元の切り下げは魅力的な選択肢だが「パニックを招き、人民元の制御が難しくなる恐れがある」と話した。

マコーリーのアナリスト、ラリー・フー氏も、当局は金融政策手段として元安を利用することを嫌がるとみる。2015─16年のような元切り下げと資本流出の悪循環は、中国人民銀行(中央銀行)が最も避けたい事態だからだ。その上中国は、世界における自らの役割を自認しており、通貨安戦争を仕掛けたと批判されることは望んでいない。

(Samuel Shen記者 Andrew Galbraith記者)

 
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