中国の国際派女優、ファン・ビンビンさんは「陰陽契約」による脱税で約146億円の支払いを命じられました。中国映画界に厳冬期が到来したことを思わせる今回の判決。中国では当局に目を付けられたら誰一人として逃れられないとの見方もあります。
123日にわたり行方が分からなくなっていたファン・ビンビンさんが、「党あっての私」と書かれた反省文を発表したことが注目されています。
10月3日、ファン・ビンビンさんは自身のウェイボー(微博)アカウントに600字あまりの反省文を掲載し、税務部門の最終決定に従い追徴金と罰金を納付すると表明しました。
今年5月、中央テレビの元キャスター崔永元氏がファン・ビンビンさんの「陰陽契約」1組をネット上に公開し、不正所得による重大な脱税疑惑があることをほのめかしました。また、視聴者がファン・ビンビンさんを脱税疑惑で通報したことによって、当局の関連部門の注意を引き起こしました。
江蘇省税務局は9月30日、ファン・ビンビンさんに正式な処罰決定書を通達し、8億8000万元の罰金を科しました。ただこれまでに同様の事件を起こしたことがないことを考慮し、期限内に納付すれば公安機関への移送を行わない、つまり刑事責任を追及しないと決定しました。
米国在住の作家 張林氏
「ファン・ビンビンは運が良かったというべきだろう。(罰金のほか約1年の実刑判決を受けた)劉暁慶(リウ・シャオチン)より運が良かった。中国の刑法に従えば、数十万元の汚職事件にはすべて十年以上の実刑判決が下される」
中国国家税務局は映画業界の税収秩序を規範化する必要があるとして、今年の年末までに自主的に追徴を申し出た場合は行政処罰と罰金を免除するが、そうでない場合は法的責任を追及するとの声明も出しています。
米国に亡命した中国人企業家 肖運軍氏
「誰一人として逃げられない。当局はあらゆる手段を講じて個人の財産を奪い取る。会社の規模など関係ない。彼女は芸能界の代表的な一人に過ぎない。他の映画スターが自主的に金を差し出すよう、彼女は見せしめにされた」
張林氏
「相手がファン・ビンビンだろうが誰であろうが、(お金を)取ろうと思ったら必ず取る。政府役員であっても同じだ。党や国の指導者から見れば、(納税者は)丸々と太った豚にしか見えない。肥育して屠畜する必要ができたらすぐに引っ張り出して首をはねる。民間企業や外資系はもちろん、必要と判断したら同じように手を下す」
アメリカ在住の作家・張林さんは、当局から「屠畜」された企業の多さを指摘します。
張林氏
「『屠畜』された民間企業はものすごい数だ。以前、薄熙来が重慶市で「毛沢東称賛 暴力団撲滅運動」を行ったときも大勢を逮捕した。中国の富豪はこの数十年間みな共産党に『屠畜』されている。その例は多すぎるほどある。例えば中国一の富豪だった万達グループの王健林、今やすっかり鳴りを潜めている。彼がまだ金を持っているのか誰も知らないし関心も持っていない。中国では民間企業家は一匹の黒豚にすぎない。利用価値がある時には小金を稼がせてやって、不要になったら屠畜される」
肖運軍氏
「私の世代の中国での経験から判断すると、今回の中国共産党による国有化運動、闇勢力撲滅運動は、長く続く可能性がある。党の財源が不足すれば、「取り締まり」や「国有化」といった手段を使って私有財産を取り上げるしかないからだ。中国の庶民はあらゆる手段で資産を巻き上げられている。彼らに(国外に)逃げるチャンスなどない。金は言うまでもなく持ち出せない」
あるネットユーザーは「私は自分の輝かしい未来のために働いていると思っていたが、まさか党の財布を膨らませるためだったとは…」とコメントしています。