焦点:臨時国会、入管法改正案・日米通商交渉など与野党対決色強まる

[東京 23日 ロイター] – 24日に召集される臨時国会では、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案が、与野党の対決構図となりそうだ。また、自動車・農産品で大幅譲歩を迫られる可能性がある日米通商交渉を巡って論戦が激化する可能性があり、早くも会期延長の思惑も出ている。

政府・与党はまず、2018年度補正予算案を審議し、早ければ11月上旬の成立を目指している。そのうえで入管法改正案や国民投票法改正案、水道法改正案など計13本の法案を提出する予定。

法案提出件数は、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、臨時国会で最も少ない。

安倍晋三首相は24日に所信表明演説後、25日から訪中し習近平国家主席らと会談。その後、シンガポールで11月11日から開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議に出席し、さらにパプアニューギニアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)などにも参加する予定で、首相出席が必要な審議日程が制約されるため、法案を絞ったとみられる。

こうした点を踏まえ、政府・与党は29日に代表質問をスタートさせ、首相出席が求められる衆参予算委員会での補正予算案審議は、11月上旬までに終えたい意向だ。

ただ、その後の国会審議は、不透明感が濃い。政府が重要法案と位置付ける入管法改正案では、新たな在留資格として一定の知識や経験が必要となる「特定技能1号」と、熟練した技能が必要となる「特定技能2号」の2種類を創設。2号では、在留期限が撤廃され家族の帯同が認められる。労働法の専門家の間では、単純労働者の受け入れを原則禁じてきた従来方針からの抜本的転換とみられている。

これに対し、野党側は事実上の移民法案であり、移民は認めないとしてきた政府見解に反する内容だと追及する方針。そのうえで改正案を首相出席の委員会審議が必要な「重要広範議案」に指定するよう要求し、徹底審議を求めていく。

また、与党内の一部にも「女性や高齢者などの労働参加拡大が、優先されるべきでないか」(与党関係者)との慎重意見がくすぶっており、国会論戦を通じて、世論がどのように変化していくのかも、法案成立の行方に影響を与えそうだ。

さらに安倍首相が強い意欲を示す憲法改正に向けた衆参両院の憲法審査会の動きも、臨時国会における大きなポイントだ。

自民党は憲法9条への自衛隊明記を柱とする党の改憲条文案を憲法審に提示し、議論を進めたい考え。野党側は改憲の是非を問う国民投票でのテレビCM規制を優先すべきとし、自民党案の議論を拒む方針だ。

<予算委で日米通商交渉の論戦も>

さらに予算委員会では、来年1月からスタートする日米通商交渉も議論の対象となる可能性がある。9月の日米首脳会談後、安倍首相はじめ日本政府側は、農産物の大幅な関税引き下げにつながる自由貿易協定(FTA)ではないと説明した。

だが、米側はFTAと説明したうえで、環太平洋連携協定(TPP)以上の優遇措置を獲得する意欲を鮮明にしている。与党内でも交渉を担当する「茂木敏充経済再生相の答弁が注目される」(幹部)との声が上がっている。

こうした与野党対決ムードをさらに強める要因が浮上した。国民民主党の長浜博行参院議員が離党し、衆参両院で立憲民主党が野党第1党となり、衆院だけでなく、参院でも与党に対決する野党の主張が強まる見通しだ。立憲の蓮舫副代表は23日の会合で、野党の連携強化に意欲を示した。

臨時国会は24日から12月10日までの48日間。安倍首相の外交日程が立て込む中で、野党側の抵抗が強まれば、重要法案の審議が与党の想定通りに進まず、会期延長が与党内で議論される展開も予想される。

自民党の二階俊博幹事長は18日、記者団に対し「足りないときには、また考える」と述べ、会期延長に含みを持たせている。

新閣僚の答弁次第では、大荒れになる可能性もあり、臨時国会は冒頭から目を離せない展開になりそうだ。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

 
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