【動画ニュース】「地下水汚染の浄化に1000年」大気だけでなく水までも…中国

深刻な大気汚染により、中国では毎年110万人が早期に死亡し、2000万トンもの農作物が深刻な被害を受けていることが、最新の研究結果で明らかにされました。中国のもう一つの深刻な環境問題、地下水汚染も再び注目されています。

米国営放送ラジオ・フリー・アジア(RFA)は10月2日、香港の中文大学研究チームが雑誌『環境科学速報』に発表した研究報告について報じました。報告によると、大気汚染により中国では毎年約110万人が早期死亡し、2000万トンもの農作物が打撃を受けています。

同時に、環境を破壊するもう一つの深刻な水資源汚染についても言及されています。

水不足と河川の汚染が日増しに深刻さを増す中国では、地下水汚染は当局が避けて通りたい問題です。中国の地下水汚染について、中国人研究者は「重金属に汚染された地下水の浄化には1000年かかる」との見方を示しています。

ドイツ在住の環境問題専門家 王維洛氏

中国の地下水は、すでに深層部まで汚染されている。深層の地下水とは地層の最も下にある隔離された水脈で、岩盤層よりも下の地下水を指す。例えば、華北平原は黄河の土砂が堆積してできたもので、地表部分の軟らかい堆積物の下には水を通さない岩石の層がある。汚染されているのは、その下にある地下水だ。この深層の地下水は他から隔離されているため、地表の水と交わることはほとんどないと言ってよい。ということは、この深層地下水が汚染された場合、きれいな水と入れ替えることが非常に難しいことを意味している

2017年初頭、中国公共環境研究センター主任の馬軍氏は「地下水汚染はさまざまな原因が絡み合っている。汚染範囲も広く、対策と管理が難しい」と述べています。

王維洛氏

深層地下水汚染の主な原因は、地下水の過剰な汲み上げだ。それにより地盤沈下の問題が生じた。華北平原は北京を含む広大な平野だが、地下水の水位が数十メートルも下がったため、その上に建築された建物や道路、インフラなどが危険にさらされている。地盤沈下が起きてしまったら、その上の建物は倒壊し、道路には亀裂が入り、パイプラインの断裂なども起こり得る

四川省の人権・環境保護活動家 譚作人氏

都市部の水源確保は非常に大きな問題だ。現在、多くの都市が二つ目の水源を確保しようとしている。主な水源の水量が減ってしまったからだ。例えば河川の水量がどこも3割から5割減ってしまった一方で、都市部の水消費は倍増している。需要と供給のバランス問題が生じている

中国に地表の水を管理する法律はあるものの、地下水管理の法整備はまだ不十分です。

中国環境保護部は2011年に『全国地下水汚染防止計画』を公布し、2020年までに地下水汚染を食い止めると発表しましたが、問題は今も解消されていません。

譚作人氏

このような改善計画が掛け声だけで終わってしまったら、地下水汚染はますます深刻化する。長江上流の岷江(長江支流の一つ)流域に位置する成都市は水の非常に豊かな都市だが、そこでも水不足が起きている。さらに多くの都市は重度の水不足に見舞われている。これは深刻な体制による問題というべきだ

ドイツ在住の環境学者、王維洛(おう・いらく)さんは、深層地下水は戦争中、水資源の要(かなめ)として重用されるが、中国は敵を待つまでもなく自分で自分の首を絞めていると語っています。

王維洛氏

地表の水源は敵に毒を入れられたり破壊されたりしたら使えなくなる。その心配がない唯一の水源が地下水だ。イスラエルは周辺のアラブ諸国に囲まれているため、地下水の採掘の禁止政策を実施している。地下水の採取を厳しく禁じることで、地下水は国の非常時に、国民の命を守ることができる

中国はもともと、水の8割以上を農地灌漑に提供することが可能でしたが、工業化や都市化が進むにつれ、さらに工業用水の効率の悪さも加わりました。中国の鉄鋼業界では鉄鋼1トン当たり23トンもの水を必要としており、大量の工業排水や生活排水が河川に垂れ流しにされています。

いわゆる「中国経済の奇跡」は、深刻な環境汚染という大きな代償をもたらしました。さらに、農地の汚染などといった「生態爆弾」を数多く作り出しており、これらの爆弾がいつ爆発するのか、誰にも予測できません。王さんは、深層地下水の汚染問題は中国人にとって本当の災いだと述べています。

 
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