[ワシントン 29日 ロイター] – 米商務省は29日、中国の福建省晋華集成電路(JHICC)に対する米国企業の輸出を制限したと発表した。同社の新型メモリーチップによって、米軍システム向けにチップを提供する米企業が脅かされる「重大なリスク」があると指摘した。
同省の声明によると、JHICCは米国の製品やソフト、技術の輸出が制限される「エンティティーリスト」に加えられた。
専門家はこれについて、イランなど米国の制裁対象国に米国製品を輸出する外国企業への処罰として知られる法的手段を、米企業の経済的存続のために利用する前例のない措置の可能性があると指摘した。
今回の措置は、今年4月に中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)<000063.SZ>に対し、米国の対イラン・北朝鮮制裁に絡む合意に違反したとして米企業からの部品調達を禁止した決定に近い。ZTEは主要事業が停止する事態に陥った。
JHICCは中国政府がハイテク業界の成長推進を目指す政策「中国製造2025」の中心的存在であることから、この問題は米中間の新たな火種になるとみられる。
米半導体大手マイクロン・テクノロジー<MU.O>は昨年末、JHICCと台湾のユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC)<2303.TW>が半導体の設計図を盗んだとして、カリフォルニア州の裁判所に提訴した。裁判は現在も係争中。
今回の措置は、企業間の係争を米中間の貿易摩擦の領域に発展させた格好だ。
ロス米商務長官は声明で「海外企業が米国の国家安全保障上の利益に反する活動に関わる場合、われわれは国家利益を守るために強力な対応を取る」と言明した。
米商務省報道官は今回の決定について「規制面の基準に基づいた」措置だと説明し、JHICCから異議申し立てがあれば審査するとした。
リンリー・グループのプレジデントで半導体専門家のリンリー・グウェナップ氏は、JHICCに機材を輸出している可能性が高い米企業としてアプライド・マテリアルズ<AMAT.O>やラム・リサーチ<LRCX.O>、KLAテンコール<KLAC.O>を挙げ、「これらの米企業から機材を買わずに最先端の半導体製造工場を構築することはほぼ不可能だ」と指摘した。
KLAテンコールの最高経営責任者(CEO)は29日の決算会見で、商務省の措置によって2018、19年の業績に影響が生じることは想定していないと述べた。
貿易を専門とする弁護士のダグラス・ジェイコブソン氏は、米企業がどの企業と取引できるかを定めた「エンティティーリスト」を米国産業の経済的な存続のために利用するのは前例がないようだと指摘。同リストは従来、米輸出管理法への違反を阻止するために利用されてきた経緯があり、今回の措置は「大幅な拡大適用のようだ」と述べた。