ドーパミンは、多くの役割を持った脳内の重要な化学伝達物質です。
報酬機能、モチベーション、記憶、体の動きの調節機能に深く関わっています。
ドーパミンが大量に放出されると、特有の動きを繰り返そうとする快感と刺激が作り出されます。
その一方で、低い濃度のドーパミンはモチベーションを減少させ、多くの人が興奮することに対しての意欲を失くすことにつながります。
通常ドーパミン濃度は、神経系内で規則正しく調節されていますが、自分自身で自然にドーパミン濃度を増やすこともできるのです。
この記事では、自然にドーパミン濃度を増やす10の方法をご紹介します。
1.タンパク質をたくさん摂取する
タンパク質はアミノ酸と呼ばれる小さなブロックの集まりでできています。23個の違った種類のアミノ酸があり、そのいくつかは私達の体で合成することができ、その他は食事から摂取しなければなりません。
チロシンと呼ばれるアミノ酸は、ドーパミン生成において重要な役割を果たします。元々私たちの体の中にある酵素は、チロシンをドーパミンに変化させることができます。このことから、チロシン値を適正に保つことはドーパミン生成において、とても重要だということがわかります。また、チロシンはフェニルアラニンと呼ばれる他のアミノ酸の一つから作られます。
チロシンとフェニルアラニンのどちらも、七面鳥の肉、牛肉、卵、乳製品、豆類のようなタンパク質を豊富に含む食品から摂取することができます。チロシンとフェニルアラニンの摂取量を食事の中で増やすことは、脳内のドーパミン濃度を増加し、熟慮を促し記憶力を向上させる効果があることが、ある研究でわかりました。
反対に、フェニルアラニンやチロシンが食事から排除すると、ドーパミン濃度は激減することもわかっています。
このような研究結果から、アミノ酸の摂取量はドーパミン濃度に影響を与えることがわかったものの、タンパク質の正常変動が影響を与えるかどうかについては未だわかっていません。
要約 ドーパミンはアミノ酸であるチロシン、フェニルアラニンから作られ、どちらもタンパク質の豊富な食品から摂り入れることができます。これらのアミノ酸を多く摂取することで、ドーパミン濃度を増進することができます。
2.飽和脂肪食品をできるだけ控える
いくつかの動物実験で、動物脂肪に含まれるバター、脂肪分の高い乳製品、ヤシ油、ココナッツ油などの飽和脂肪を大量に摂取すると、脳内のドーパミン伝達機能を破壊してしまうことがわかりました。
今のところ、これらの研究はネズミにのみ実施されていますが、この結果は非常に興味深い情報でしょう。
ある研究では、摂取するカロリーの半分を飽和脂肪にしたネズミは、不飽和脂肪を摂取した動物に比べて、脳内の刺激機能部分のドーパミン伝達機能が減少したことがわかりました。
興味深いことに、体重、体脂肪、ホルモン、または血糖値の違いに関わらずこれらの変化が起こりました。
何人かの研究者たちは、飽和脂肪の多い食事は体内の炎症を増加させるために、ドーパミン機能に変化が起きたのではないかと仮説を立てていますが、まだ多くの研究が必要とされています。
複数の観察研究では、飽和脂肪の多量摂取と人間の記憶力や認知機能には関連性があることがわかりました。しかし、それらの影響がドーパミン濃度に関係しているかどうかは不明です。
要約 動物実験によって、飽和脂肪を多く摂取することは脳内のドーパミン濃度を減少させ、報酬機能の反応を鈍らせることに繋がることがわかりました。しかし、それが人間に対しても同じ反応が起こるかどうかは明らかになっておらず、更なる研究が必要です。
3.体に良い働きをする細菌「プロバイオティクス」を摂取する
近年、胃腸と脳が密接に関連していることが科学者たちによって発見されました。事実、胃腸は「二番目の脳」と呼ばれていて、ドーパミンを含んだ多くの神経伝達物質のシグナリング分子である神経細胞が備わっています。胃腸に存在するある種類の細菌は、気分や行動を左右するドーパミンを生成することができることもわかっています。
この分野の研究には限界があります。しかし、複数の実験ではこの細菌が多量に摂取された時、ある耐性菌は動物、人間両方に置いて、不安や鬱病の症状を軽減させることができることを示しています。
気分、プロバイオティクス、そして胃腸の健康を保つことへの関連性はわかっているものの、依然に不明な点はあります。
ドーパミン生成が、プロバイオティクスを摂取することにより気分を良くさせる影響を与えている可能性は高いようですが、どれくらい重要な効果が出るのかを決定付けるには、更なる研究が必要です。
要約
プロバイオティクスを補う事は、人間や動物の気分を高めることに関連しています。しかし、どのようにドーパミンがその役割をしているかを決定付けるには、更なる研究が必要です。
4.ベルベットビーンを食べる
ムクナという名前で知られているベルベットビーンは、ドーパミンの前駆物質であるL-ドパを多く含んでいます。
ある研究では、これらの豆を食べることで自然にドーパミン濃度を上昇させる効果があると示しています。特にパーキンソン病や、運動障害は、ドーパミン濃度が低いことによって引き起こされます。
パーキンソン病患者とのある実験で、250グラムの茹でたベルベットビーンを摂取した、パーキンソン病を持つ患者のドーパミン濃度は劇的に上昇し、食事後のパーキンソン病の症状が約1、2時間の間減少されたことがわかりました。
同じように、ムクナサプリメントに関する研究では、従来のパーキンソン病の薬よりも効果的で長く効くことがわかりました。
これらの食品はLドパの天然成分ではありますが、食生活やサプリメント習慣を変える場合は、必ずお医者さんと相談してからにしましょう。
要約
ベルベットビーンズはLドパの天然成分で、ドーパミンの前駆物質です。研究によると、従来のパーキンソン病の薬よりもドーパミン濃度を促進する効果があることがわかっています。
5.適度な運動
エクササイズはエンドルフィン値の上昇や、気分を改善するのに推奨されています。
気分の向上は、有酸素運動をしたわずか10分後から見られ、20分後には最高潮に達します。
これらの効果は、全てがドーパミン濃度の変化によるものとは言えませんが、動物実験によるとエクササイズは脳内のドーパミン濃度を上昇させる効果があると示しています。
ネズミにおいては、トレッドミル走によってドーパミン放出量が増え、脳内の報酬機能部分のドーパミン受容体の数が上昇しました。
しかし、人間においてはこれらと同様の結果は得られていません。
ある実験で、30分間の中強度のトレッドミル走では、大人のドーパミン濃度の上昇は見られませんでした。
しかし3か月行ったある実験で、1時間のヨガを6日間した後、ドーパミン濃度が上昇していることがわかりました。
適度な有酸素運動は、パーキンソン病を持つ人や、脳の体を動かす機能を妨げる低いドーパミン濃度を持つ人には、非常に効果的です。
複数の研究では、毎週激しい運動を数回取り入れることは、パーキンソン病を持つ患者の運動調節機能を劇的に改善することがわかり、これはドーパミン機能に有益な影響をもたらしているためと考えられています。
人間のドーパミン濃度を上昇させる絶対的な効果を示すエクササイズの種類や、継続期間についてはまだまだ研究が必要とされています。しかし、最新の研究には、将来性がありそうです。
要約
エクササイズは気分を向上させ、定期的な運動によりドーパミン濃度を押し上げることができます。ドーパミン濃度を上昇させるための具体的な提言をするには、更なる研究が必要です。
6.睡眠をしっかりとる
ドーパミンが脳内に放出されると、警戒心と覚醒した感覚が作り出されます。
動物実験では、目覚める時間となる朝に大量のドーパミンが放出されると、その濃度は寝る時間となる夜にかけて自然に減少していきます。
しかし、睡眠不足はその自然のリズムの乱してしまいます。
人が一晩中一睡もせずにいると、翌朝には脳内のドーパミン受容体は劇的に減少していきます。
ドーパミンは覚醒を促進させることから、受容体の感受性を低下させることで、眠れない夜の次の日などは眠りにつきやすくなります。
しかしながら、ドーパミン濃度が低い場合、集中力の低下や調整不足などの好ましくない影響をもたらします。
正常な質の高い睡眠は、ドーパミン濃度をバランス良く保ち、一日を通して注意力と機能力を高める手助けしてくれます。
国立睡眠財団は、適切な睡眠環境で毎日7~9時間の睡眠が大人には最適だと推奨しています。
睡眠環境は、毎日同じ時間に起床し眠りにつくこと、寝室の雑音を減らすこと、夜のカフェイン摂取を控えること、ベッドは睡眠時以外は使用しないことで改善することができるでしょう。
要約
睡眠不足は脳内のドーパミン機能の感受性を減らすことは、過度の眠気を引き起こすことになります。夜の質の高い睡眠は、自然なドーパミンのリズムを規則正しくしてくれます。
7.音楽を聴く
音楽を聴くことは、脳内にドーパミンを放出させる刺激を与えるのに面白い方法と言えるでしょう。
複数の脳の画像検査で、音楽を聴くことは、脳内のドーパミン受容体を豊富に持つ報酬機能と幸福機能の部分で働きが活発になることがわかっています。
音楽によるドーパミンへの効果を調査した小さな実験では、人が鳥肌が立つような楽器演奏の曲を聞いた時、脳内のドーパミン濃度は9%増加したことがわかりました。
音楽がドーパミン濃度を押し上げることができることから、音楽を聴くことはパーキンソン病患者の運動機能を助ける効果があることがわかります。
今まで、音楽とドーパミンにおいての全ての研究では、ドーパミン濃度上昇は歌詞付きの音楽ではなくメロディーに反応することを確認するため、楽器演奏のみが使われてきました。
歌詞付きの曲が同じ、またはもっといい効果を出すのかは更なる研究が必要です。
要約
自分の好きな音楽を聴くことは、ドーパミン濃度を押し上げてくれます。歌詞付きの曲の効果については、更なる研究が必要です。
8.瞑想する
瞑想とは、雑念を払う訓練です。体の内側に集中し、評価や愛着を忘れ、自分の考え事をひとまず流すこと…。
立っている時でも、座っている時でも、または歩いている時でも瞑想は行うことができます。定期的な訓練は、精神面や健康面の改善と関連しています。
新しい研究によって、これらの効果は脳内のドーパミン濃度の上昇によるものだということがわかりました。
8人の瞑想指導者を含めたある研究では、静かに休んでいる時に比べて1時間の瞑想後の脳内ドーパミン濃度は64%も上昇したことがわかりました。
これらの変化は瞑想者の気分を向上させ、長時間の瞑想状態のモチベーションを保ち続ける効果があります。
しかしながら、これらのドーパミン促進効果は瞑想指導者のみに起こるのか、それとも瞑想初心者にも同じ効果が出るのかはまだわかっていません。
要約
瞑想は、瞑想指導者の脳内のドーパミン濃度が上昇させました。しかしこれらの効果が瞑想初心者にも同じように現れるのかは不明です。
9.日光を浴びる
季節性情動障害とは、日光を十分に浴びていない人に起こる症状で、冬が訪れると悲しくなったり鬱になる状態のことを言います。
日光を浴びる時間が少ない人は、ドーパミンを含む気分を向上させる神経伝達物質の濃度が減少し、日光を浴びる時間が多い人ほどそれらの濃度が上昇することがわかっています。
健康な大人68人を使った実験では、30日間で一番日光を浴びた人たちは、脳内の報酬機能、動作機能のエリアでドーパミン受容体の密度が最も高かったことがわかりました。
日光浴がドーパミン濃度を促進し、気分を向上させるということから、日光浴のしすぎは危険で中毒になる可能性があるということをここで安全のため付け加えておきます。
1年の間、1週間に2回日焼けサロンに通わせた人を使った実験では、ドーパミン濃度は劇的に上昇し、この行動を繰り返す欲求に駆られることがわかりました。
加えて、過度の日光浴は皮膚へのダメージや皮膚がんのリスクを高めるため、適度にすることが重要です。
紫外線が最も強い午前10時から午後2時の間は日光浴を制限し、紫外線指数が高い時はなるべく日焼け止めを塗ることが一般的に勧められています。
要約
日光浴はドーパミン濃度を促進してくれますが、皮膚へのダメージを避けるために、安全性には気を付けて行うことが重要です。
10.サプリメントで補う
人間の体は、ドーパミンを生成するために鉄、ナイアシン、葉酸、ビタミンB6含む複数のビタミンやミネラルを必要とします。
もしこれらの栄養素の一つ、もしくは一つ以上でも欠けていると、人間の体に必要なドーパミンを生成するのが難しくなります。
血液検査はこれらの栄養素が欠けているかどうかを見るのに役立ちます。もし欠けているのであれば、サプリメントで補うこともできます。
適正な栄養素に加えて、複数のサプリメントの摂取はドーパミン濃度を上昇させてくれます。しかし、この結果は動物実験のみに制限されています。
これらのサプリメントは、マグネシウム、ビタミンD、クルクミン、オレガノ、緑茶などを含みます。しかし、人間への効果には更なる実験が必要となります。
要約
鉄、ナイアシン、葉酸、ビタミンB6を十分に摂取することは、ドーパミン生成に欠かせません。予備動物実験によれば、いくつかのサプリメント摂取はドーパミン濃度を促進させる効果があるとわかっていますが、人間への効果は更なる実験が必要です。
結論
ドーパミンは、気分や報酬機能、モチベーションにおいて重要な脳内化学物質で、体の動作機能を規則正しくする効果もあります。
この濃度は通常、体内で正常に保たれています。しかし、食事や生活習慣でそれらの濃度を促進することができます。
タンパク質、ビタミン、ミネラル、プロバイオティクス、そして適量な飽和脂肪などのバランスの良い食事は、必要なドーパミン生成に効果的です。
パーキンソン病のようにドーパミン不足による障害を持つ人は、そら豆やムクナなどの自然から摂れるLドパを摂り入れることで、ドーパミン濃度を正常に戻す手助けをしてくれます。
他にも、正しい生活習慣の選択もドーパミン生成には重要です。十分な睡眠、運動、音楽を聞くこと、瞑想、適度な日光浴もドーパミン濃度を促進させる効果があります。
全体的に見て、バランスの良い食事と健康的な生活習慣は、体が作る自然なドーパミン生成や脳内機能を正常にするのに大いに効果があると言えるでしょう。