焦点:中国と台湾の半導体協業に強まる疑念、貿易摩擦の激化で

[台北 7日 ロイター] – 米政府が中国半導体メーカーへの米製品供給のストップを決め、半導体のグローバルプレーヤーを目指す中国と、その動きを支援している台湾企業を巡って高まる緊張関係が浮き彫りになっている。

中国はここ数年、世界の主要な半導体取引から締め出されたことで、台湾の半導体メーカーに中国本土での半導体製造を持ちかけて、協業関係を強化してきた。

そうした中、台湾の半導体大手、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC)<2303.TW>は先週、中国の福建省晋華集成電路(JHICC)との共同研究開発を中止。米政府がJHICCに対する米企業の輸出制限措置を打ち出したことを受けての対応だ。

UMCなどの台湾企業は、中国に半導体製造の技術を提供する代わりに、急速に拡大する中国市場への参入を認められてきた。

中国は長年、集積回路(IC)不足に悩まされてきており、2017年に中国が輸入した半導体は2700億ドル相当と、原油輸入を上回る規模。

業界関係者によると、中国と台湾企業の間では、ここ数年で少なくとも10の合弁会社が立ち上がっており、台湾の技術者を高収入で勧誘しているという。

中でも中国側にとって最も価値のある台湾企業との協業は、ファンドリーサービスとメモリーチップ生産の強化に結び付く種類のものだ。これらの2分野は高度な製造技術と多くの資金投入が必要なため、海外企業からの協力が他の分野以上に求められる。

だが、米中の貿易摩擦や中台の緊張が高まる中で、懸念が強まっている。台湾の米代表機関、米在台協会(AIT)台北事務所のブレント・クリステンセン所長は企業関係者との会合で、中国が「市場をゆがめる補助金」や「強制的な技術移転」により先端技術分野を含む産業を奪い取っていると指摘。「こうした(中国の)行動は、米国や台湾、その他の国々の経済に打撃を与えている」と批判した。

台湾は世界有数のIC輸出国であり、政治的に緊張関係にある中国に台湾が経済の屋台骨でもある技術を奪われるのではないかと心配する声は多い。台湾側も、中国側に台湾の最先端技術が渡らないよう、中国との協業を注意深く見っている。台湾経済部は「企業が中国本土でウエハー生産に投資する場合には、一世代古い製造技術とすることなどを義務付けている」と説明している。

米商務省が先月、JHICCを米国の製品やソフト、技術の輸出が制限されるリストに加えたことで、UMCとJHICCとの協力には厳しい視線が注がれている。

米司法省は先週、米半導体大手マイクロン・テクノロジー<MU.O>の企業秘密を盗もうとしたとしてUMCとJHICCを起訴。バーンスタインのアナリストは「台湾のハイテク企業は自らの現在の立ち位置やサプライチェーンを注意深く見直す必要に迫られている」と指摘する。

中国が半導体生産でトップに追いつくには少なくともあと6年はかかるとの見方があるが、その半導体製造能力は既にサプライチェーンの中では脅威だとみられている。

中国・安徽省合肥市と台湾のDRAMメーカー、パワーチップテクノロジーとの合弁「Nexchip(ネクスチップ)」は、12インチウエハーの工場建設に着手して2年半も立たないうちに、月産8000枚の生産を開始。パワーチップの資源と台湾の人材を使うネクスチップは中国の海外半導体メーカー依存を減らすのに役立っている。

ネクスチップは液晶ディスプレイ(LCD)を駆動する半導体の生産で世界一の座を目標に掲げ、関係者によると、さらに3カ所の12インチウエハー工場の建設を計画中で、2019年までに月産2万枚体制を目指しているという。

昨年ネクスチップを訪れた研究者は合肥市の工場の進捗は「飛躍的だ」とした上で、台湾企業は中国市場への投資が必要になる可能性が高く、台湾の産業政策が問われることになるとの見方を示した。

(Jess Macy Yu、 Yimou Lee記者)

 
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