日本の成長率見通しを下方修正、19年1.0%に=OECD

[東京 21日 ロイター] – 経済協力開発機構(OECD)は21日、米中貿易摩擦が深刻化する中、世界貿易の鈍化などを背景に2018、19年の日本の経済成長率見通しをそれぞれ、0.9%、1.0%に下方修正した。今後、中国の内需成長率が2%ポイント低下した場合、日本経済に0.2%ポイント超の下押し圧力がかかるとも試算している。

前回9月の報告では、18、19年ともに1.2%の成長を見込んでいた。新たに公表した20年は19年10月に予定されている消費税率引き上げの影響もあって0.7%に減速すると予測している。

18年の成長率見通し引き下げは、台風や地震など夏場に自然災害が相次ぎ、7─9月期がマイナス成長に落ち込んだため。それでもOECDでは、10─12月期には自然災害の影響も緩和されるため、日本経済の拡大局面は来年にかけて継続するとみている。

もっとも、今後の世界・日本経済に重くのしかかってくるのが、激化する米中貿易摩擦を中心とした保護主義的な通商政策の影響だ。

OECDは加盟国の拡張的な財政・金融政策が後退している中で、関税引き上げなど貿易摩擦が、すでに「成長を鈍化させ始めている」としており、先行き「付加価値網や雇用を阻害する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

具体的には、米中経済の減速を主因に19年の世界経済見通しを前回の3.7%から3.5%に引き下げ。20年も横ばいにとどまる見込み。世界貿易の鈍化が、19年の日本経済見通し下方修正の根拠となった。

OECDによると米中間の関税引き上げによる負のインパクトは、米国よりも中国経済の方が大きい。中国の内需成長率が2年間にわたって2%ポイント低下するショックが発生した場合の影響を試算したところ、日本の成長率を0.2%ポイント超押し下げ、OECD加盟国の中で最も大きな影響を受けるという。

OECDは、こうしたリスクを踏まえ、加盟国に対して「不確実性を低下させ、保護主義を回避し、景気後退に対応する上で政策協調が必要」と呼びかけている。

また、政府債務対GDP比が加盟国中で最高水準にある日本の財政について「深刻なリスク」と指摘。財政の持続性を確保するため、消費税の「漸進的な引き上げ」と歳出抑制策を含む詳細な財政健全化計画が必要と提言。

金融政策は「2%の物価安定目標を達成するまでの間、拡張的政策を維持すべき」としている。

(伊藤純夫)

 
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