中国国家統計局の最新データにより、10月の中国不動産市場の成長率が過去半年で最低だったことが明らかになりました。専門家は、中国の経済危機はすでにひっそりと始まっており、来年にも不動産バブルが弾ける可能性があると指摘しています。
11月14日、国家統計局が発表した10月の経済データによると、10月の中国の社会消費財小売総額は3兆5500億人民元、日本円で約57兆7100億円で、対前月伸び率は8.6%。9月の9.2%を下回り、この半年で最低となりました。個人消費の継続的な疲弊が露呈しています。
取引額の大きな商品に対するニーズや建築、消費支出を牽引する不動産市場は、逆風を受ける経済の推進力にもなっています。中国の不動産市場も冷え込みが続き、分譲住宅の販売面積は2カ月連続で縮小しており、今年9月は8月より3.6%下降し、10月は9月より3.1%下降しました。
中国の金融アナリスト・任中道さんは、10月の金融データがさらに問題を明らかにしていると考えています。
中国の金融アナリスト 任中道氏
「10月の金融データには多くの人が驚愕した。人民元による貸付金とノンバンク融資の規模が大幅に縮小しており、前月比が急降下するほどだ。これは経済全体が停滞していることを意味する。企業は開発投資するための融資を受けたくないと考えている。これは非常に大きな問題だ」
実際には、中国では今年に入り、経済成長を刺激するために数々の政策が打ち出されました。7月と8月にはインフラ建設の大規模な推進が提起され、その後にも財政部が地方政府の特別債券を発行し、インフラ分野への投資意欲を刺激しました。
統計局のデータによると、今年の1月から10月までに道路、建築及び他の固定資産への投資が前年同期比で5.7%増加し、1月から9月までの伸び率5.4%を上回っています。
中国の金融アナリスト 任中道氏
「これはつまり、資金面でもプロジェクトにおいてもインフラ整備において努力を重ねる必要があることを示している。だがいずれにおいても彼らが期待する効果が表れていない。経済はインフラ整備によっても成長を再開していない」
任さんは、インフラ事業によってもGDPを伸ばせない原因は、経済が停滞する原因が需要側にあり、個人消費と企業発展の両方が縮小しているからだと述べています。
北京師範大学のMBA指導教官・段紹訳(だん・しょうやく)さんは、中国のGDPの下方修正や輸出の減少、庶民の生活水準の低下はすべて、中国政府による民間企業の締め付けに密接に関係していると考えています。また最近耳にする「民間企業や中小企業を支援する」との掛け声は、口先だけだと指摘しています。
北京師範大学MBA指導教官 段紹訳氏
「そもそも民間企業に支援など必要ない。政府が締め付けをやめるだけでいい。民間企業はこれまでずっと「二等市民」とみなされ、多くの面で国有企業とは比較にならなかった。数々の優遇政策や資源はすべて国有企業に向けられ、民間企業は融資を受けるのも難しかった。国有銀行が効率の悪い国有企業にしか融資しなかったからだ」
湖南省の家電モールに出店している呉さんは新唐人テレビの取材に対し、民間企業が生き残るのは難しいと話しています。数年前よりも経営が悪化し、以前は夫婦二人で客に対応していたが、今では呉さん一人でも暇を持て余し、妻が外で働いてようやく家計が維持できると漏らしています。
段さんは、中国でとっくに起きているはずの経済危機が、今静かに始まっていると述べています。
北京師範大学MBA指導教官 段紹訳氏
「実際はすでに経済危機に向けて邁進している。このことは、1.株式市場の長期低迷、2.輸出の減少、3.工場の稼働率の低下、4.失業率の増加、5.消費の減少で説明できる。これらはすべて経済危機が訪れる兆しだ」
また、中国経済を支えてきた不動産市場の停滞も、大いに注目を集めています。
北京師範大学MBA指導教官 段紹訳氏
「2019年に中国で不動産バブルが崩壊するのではないか。実際にはとっくに崩壊しているはずだが…」
中国の不動産業界では3850億元、日本円で約6兆2564億円のオンショア借り入れの返済期限が来年に迫っており、債務不履行が起きる可能性も懸念されています。
中国の金融アナリスト 任中道氏
「景気の悪化により事業主が融資を返済できなくなれば、裁判所から競売にかけられる。ここで重要なのは、米国と違って中国では無限責任を負わなければならない点だ。米国では融資を返済できなくても不動産を競売にかければ債務が終了する。だが中国ではそこまでやってもまだ返済義務がある」
任さんは、庶民に万策尽きたら、自殺者が続出する恐れがあるほか、大規模な群衆事件や、社会への報復行動が起きる可能性もあると指摘しています。