次世代モバイル通信5Gネットワーク分野における米中の競争の激化は、将来の経済の発展に関わるだけでなく、世界のネットワーク版図も新たに書き換えられるとみられます。専門家は米国に対し、関連政策を調整して中国の覇権拡大を防止する必要があると呼びかけています。
5Gネットワーク時代が幕開けとなり、米国、EU、韓国、日本、中国はいずれも2019年下半期に5G通信のプレサービスを開始し、2020年には商用サービスの開始を予定しています。
5G、つまり第5世代移動通信システムは、4Gの100倍の通信速度を備え、モノのインターネット、無人運転車、商用ドローンなどの技術に適用されます。2035年までに5G世界市場は12兆3000億ドル、日本円で約1393兆1000億円を創出するとみられています。
米シンクタンク・ハドソン研究所 上級研究員 アーサー・ハーマン氏
「この分野でリーダーシップを取り主導的地位に就くことができる者が、21世紀末まで全世界の通信技術分野において中・長期的に主役に輝く」
次世代の全世界通信技術分野で主導権を握るため、現在米中が激しい5G競争を繰り広げています。中国当局は5G事業を「中国製造2025」計画の重点項目の一つに据えて、通信事業者や通信設備メーカーに巨額の政府助成金を投入しています。一方、米国など西側諸国の5G事業は基本的に市場と民間企業で進められています。
リバダ・ネットワークス最高経営責任者(CEO) デクラン・ガンリー氏
「(中国の)助成金政策は、エリクソン、ノキア、サムスンを市場から叩き出すことが目的だ。セキュリティ分野で手抜きをさせることで、一番重要なセキュリティ分野、ネットワーク分野で優勢に立つためだ」
世界最大の会計事務所、デロイトは2015年以降、5G事業に中国が投じた支出は米国の240億ドルを超えたと報告しています。また、中国は自国の企業を支援して世界の5Gネットワーク設備市場を瞬く間に席巻(せっけん)しており、現時点で61カ国が中国のハードウェア設備の使用に同意したか、またはテスト段階に入っています。その中の最大手がファーウェイ(華為)で、中国の国を挙げての競争モデルに、業界は戦々恐々としています。
ノキア米国政策広報・公共事務責任者 ブライアン・ヘンドリックス氏
「ラテンアメリカ諸国市場における販売は通信業者だけでなく、(中国の)銀行システム、外交など複数の部門によるアプローチで行なっている」
ネットワークの安全性は将来的に国のセキュリティ政策の最先端を担うことになります。専門家は、中国が支援する企業に頼ると、各国の5Gネットワークインフラが掌握され、多大なセキュリティリスクがもたらされることになると考えています。
リバダ・ネットワークス最高経営責任者(CEO) デクラン・ガンリー氏
「5G経済圏において、1平方マイル(約1.6平方メートル)内に100万を超える設備が相互接続される。これらの通信量を支えるネットワークは、情報が盗まれたり、セキュリティが脅かされたりするリスクを潜在的に抱えている。我々はこれらに真剣に関心を持たなければならない」
5Gインフラには巨額の資金が投入されるため、一旦契約が締結されるとその後の変更は難しくなります。国家機密のセキュリティ問題を考慮して、今年8月、オーストラリア政府はファーウェイとZTE(中興通信)が同国の5Gネットワーク構築事業に参入することを禁じました。インドと韓国もファーウェイによる5Gプロジェクトへの投資を拒否すると発表しました。英国とドイツもこの点について考慮中です。
各国政府と監督機関や業界トップが参加を予定している、来年2月末にスペインで開催される世界最大級のモバイル展示会「MWC19バルセロナ」で、各国の2019年5G関連事業計画が確定される見込みです。専門家は、中国が不公平な競争により世界市場を握るのを阻止するには、この時期を逃してはならないと考えています。米国は産業政策を速やかに調整して企業が5Gネットワーク構築事業に参入できるよう保証する必要があります。
リバダ・ネットワークス最高経営責任者(CEO) デクラン・ガンリー氏
「米国がそうすれば、他の国もそれに習うだろう。これはすべての経済体制にとって有利になるため、米国が率先してやるべきだ。来年2月までに(政策変更を)発表する十分な時間が残っている。だから可能なはずだ。だがこれは最後のチャンスだ」