カナダメディアによると最近、中国の通信機器最大手、ファーウェイ・テクノロジーズの創業者の長女である、孟晩舟（もう・ばんしゅう）氏がカナダの空港で逮捕されました。この事件は今、世界中で話題になっています。
12月1日、カナダ司法省はアメリカの要請に応じて、バンクーバーでファーウェイの副総裁兼最高財務責任者（CFO）、孟晩舟氏を逮捕しました。孟容疑者が「報道禁止令」を申請したため、詳細な情報はまだ明らかになっていません。
このニュースを最初に伝えたカナダの新聞「グローブ・アンド・メール」によると、孟容疑者はアメリカの対イラン制裁に違反した疑いが持たれており、アメリカ側がカナダに逮捕を要請し、身柄の引き渡しも求めています。
2010年、イランの核兵器開発がアメリカの国家安全に脅威をもたらすことを懸念し、アメリカはアメリカ企業または非アメリカ企業を問わずに、イランとの取引の決済を不可能にする制裁を発動しました。
しかし、アメリカの商務省傘下の産業安全保障局（BIS）はのちに、中国の通信機器大手、中興通訊（ZTE）が2011年に制定した機密文書２通を入手。中には、ZTEが複数のペーパーカンパニーを利用して、イランなどの国にアメリカが輸出を禁止している製品を輸出していた事や、「F7」というコードで呼ばれている別の企業も同じ手法を使っていると記されていました。文書にはこの「F7社」がアメリカの企業「3 Leaf Systems（スリー・リーフ・システムズ）」の買収を計画しているとも記されていましたが、実際ファーウェイは2010年5月、3 Leaf Systemsの一部資産を買収しています。
2016年3月、産業安全保障局（BIS）はこの機密文書を公開し、ZTEを輸出制限の対象者に指定する制裁措置を発動しました。アメリカ国会では議員10人が、この「F7社」がファーウェイであるとして、調査を求めました。
2016年6月、アメリカ商務省はシリアやイランなどとの取引をめぐり、ファーウェイに対して召喚状を送付し、輸出規制の違反調査への協力を求めました。
そして2017年、ニューヨークの連邦検察当局がファーウェイへの捜査を開始し、2018年4月には、アメリカ司法省がファーウェイに対する刑事調査に着手しました。
米サウスカロライナ大学エイキン校 謝田教授
「米国政府は慎重に動いており、証拠を掴んでいるだろう。カナダ警察にもその証拠を提示しているはずだ。だからカナダ警察も米国の要請に応じたと思う」
ZTEはアメリカの企業との取引禁止という制裁を受け、重い罰金を支払うことになりましたが、ファーウェイの場合は刑事捜査を受けており、ZTEよりも深刻な状況に置かれていることを意味します。いったん罪が成立すれば、ファーウェイは会社側が厳しい制裁を受けるだけでなく、事件に関わった幹部らも刑事責任を追及される可能性があります。
在米弁護士 葉寧さん
「米国の輸出規制リストに載っている技術と製品は、直接でも第三国経由でも特定の国への輸出が禁止されている。この法律に触れると逮捕・起訴される対象になる」
ファーウェイは世界最大級の通信機器メーカーで、中国の5G技術のリーダー的存在でもあります。同時に、インターネット情報検閲・ブロッキングシステム「金盾（きんじゅん）プロジェクト」のハードウェアの主な提供元でもあります。
一方、ファーウェイ製品は多くの部品をアメリカ企業に頼っています。主なサプライヤー50社のうち、少なくとも18社がアメリカ企業であるため、アメリカが輸出禁止の措置を発動した場合、ファーウェイは大きな打撃を受けることになります。
米サウスカロライナ大学エイキン校 謝田教授
ファーウェイは第二のZTEになる可能性があり、間違いなく米国政府の制裁を受けるだろう。そのうえ、チップや核心的な部品が輸出禁止になると、ファーウェイは二度と立ち上がれなくなる可能性もある。世界における販売量や市場占有率も大きな影響を受けることになる」
アメリカ当局のファーウェイに対する捜査は2年前に始まり、米中貿易戦争の重要な時期に、ついに幹部の逮捕に踏切りました。中国外交部の報道官は、人権侵害だとして即刻釈放するよう求めています。この事件は世界から関心を集め、ファーウェイの行方が注目されています。
米サウスカロライナ大学エイキン校 謝田教授
米国のファーウェイに対する対処はZTEの時と同じかもしれないし、そうでない可能性もある。西側諸国における影響力は、ファーウェイの方がZTEより大きいからだ。中国に対する教訓となるのは、 「米国人または世界とビジネスをやるときには、誠実に臨むことだ」
孟晚舟氏の逮捕が5日に明らかになったことを受け、ファーウェイと取引が大きい半導体関連株が急落しています。
